理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-6-5
会議情報

ポスター演題
脛骨高原骨折後に低栄養を呈しリハビリテーションと栄養管理によりADL改善を認めた重度知的障害患者の一症例
折内 英則室井 宏育佐藤 純也
著者情報
キーワード: 低栄養, 侵襲, サルコペニア
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】

本症例は、脛骨高原骨折に対する観血的治療後、食思不振、活動性低下、長期化した侵襲により低栄養を認めADL改善に難渋した重度知的障害患者である。栄養状態を考慮しリハビリテーションを継続した結果、運動能力拡大し自宅退院に至った経過を以下に報告する。

【症例】年齢・性別:50歳代後半・男性。既往歴:重度知的障害、統合失調症。現病歴:転倒にて右脛骨高原骨折。右膝関節内骨折観血的手術(創外固定)施行後、リハビリテーション開始。

【評価】身長:150㎝ 体重:39.8㎏ BMI:17.7 IBW(kg):49.5 MNA-SF:6/14(低栄養) TEE:1412kcal BEE:981kcal 必要蛋白質量:60.0g 血液:Hb:11.1、TP:6.7、Alb:3.3、CRP:7.96。ADL(FIM):29/126 入院前ADL:自立。

【経過】(第24病日)常食10割摂取。推定摂取エネルギー量(以下、摂取量)・1413kcal。(第49病日)患部疼痛訴え強く入院生活にストレス訴え。リハ参加不良。食思不振(摂取量500kcal~1000kcal)。(第50病日)創外固定抜釘。肺炎発症。(第84病日)右脛骨骨髄炎。右骨掻爬術施行。患側下肢非荷重管理へ。食思不振著変なし。体重34㎏。ADL(FIM)52/124。(第170病日)患側下肢全荷重開始。(第182病日)地域多職種と自宅復帰準備。本人とリハビリゴールを共有。リハ参加意欲拡大。ADL(FIM)73/124。食思改善(摂取量1200~1600kcal)。積極的レジスタンストレーニングおよびADL動作練習実施。(第217病日)自宅退院。体重39.0㎏、ADL(FIM)92/124。

【考察】本症例の特徴は、重度知的障害の影響から病態や自身の治療経過について受容と理解が不良であったことである。また、肺炎や抜釘、掻爬など侵襲刺激も加わり、入院中の心身面の強いストレスが長期化し、低栄養とサルコペニアが亢進していたこともリハビリを進めていく上で考慮すべき点であった。意欲低下に伴う食思不振はリハビリを進めていく上で解決すべき課題であったが、自宅復帰に向けた環境整備を整えリハビリゴールを明確にし、それを本人・家族と共有。目標が明確になったことで食思も改善した。また、全身状態の改善に伴いエネルギー量に応じたリハビリテーションも実践できた。こうした栄養管理を考慮したリハビリテーションが、運動効果に繋がり、結果として運動能力拡大・自宅退院に至ったと思われる。

【倫理的配慮,説明と同意】本症例発表に伴い個人情報を匿名化し趣旨・方法について説明し同意を得ている

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top