理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-7-1
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ポスター演題
高齢者の下肢骨格筋量と身体運動機能との関連性
増田 真士三木 哲郎星加 純志国田 尚大三並 広親村上 恵介小山 めぐみ柳原 健太曽我部 優人増田 賢二
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抄録

【はじめに、目的】近年、加齢による筋肉減少症であるサルコペニアが注目されている。骨格筋の減少は、運動器の機能低下やロコモティブシンドロームと密接に関係し、日常生活動作能力や活動性の低下を招く。高齢者を対象とした四肢骨格筋量と身体運動機能に関する研究はあるが、下肢骨格筋量に限った調査研究は少ない。本研究では高齢者における下肢骨格筋量と身体運動機能の関連性について調査した。

【方法】平成27年6月~平成29年12月までに当院を受診し上肢骨折と診断され入院加療した65歳以上の患者32名(男性5名、女性27名・年齢65-91歳、平均78.7歳)を対象とした。身体運動機能評価としては、5m最大歩行テスト(以下5mテスト)、Timed Up & Go Test(以下TUG)、ロコモ判定に使用する2ステップTEST、立ち上がりTESTを行った。下肢骨格筋量は二重エネルギーX線吸光法(dual-energy X-ray absorptiometry)で計測した両下肢筋量を身長の二乗で除した値をleg skeletal muscle index(以下leg-SMI)とした。まず、leg-SMIと各身体運動機能評価との相関性をみた。次に、5mテスト・TUGに関しては身体的虚弱理学療法診療ガイドラインに沿ったカットオフ値〔5mテスト:5秒・TUG:13.5秒〕を基準とし、2ステップTEST・立ち上がりTESTに関してはロコモ度2の判定〔2ステップTEST:1.1・立ち上がりTEST:両下肢20CMからの立ち上がり〕を基準とし、それぞれを2群に分け、2群間におけるleg-SMIの有意差を検定した。統計処理はSPSSを使用し、Mann-Whitney検定を用いた(有意水準を5%未満とした)。

【結果】leg-SMIと相関関係にあった項目は、5mテスト〔P<0.01〕・TUG〔P<0.01〕・2ステップTEST〔P<0.01〕・立ち上がりTEST〔P<0.01〕であった。 各機能評価におけるleg-SMIの2群間比較では、5mテストは5秒以上平均3.88、5秒未満4.75〔P<0.01〕。TUG は13.5秒以上平均3.92、13.5秒未満平均4.75〔P<0.01〕。2ステップTESTは1.1未満平均4.27、1.1以上平均4.76〔P<0.05〕。立ち上がりTESTは両下肢20cm不能平均4.09、両下肢20㎝可能平均4.73〔P<0.01〕であった。

【結論】本件研究の結果により、下肢骨格筋量と各身体運動機能の関連が確認され、下肢骨格筋量が転倒転落リスク・ロコモ度共に影響していた。下肢骨格筋量を増加させることは筋肥大を促すことであり、筋肥大を促す筋力増強訓練としてはスクワット等のレジスタンストレーニングが効果的といわれている。但し、運動強度としてはBorg主観的運動強度スケールにおいて15~17が目安にするとされているが、高齢者の安全性に配慮し、Borg主観的運動強度スケール13程度の運動負荷の訓練を実施、指導していく事が適切と考えた。今後の課題としては、症例数を増やしていくこと、左右の下肢骨格筋量と身体運動機能評価について検討していく必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当院の倫理委員会の承認(115)を得るとともに、診療録から得られた個人情報を目的達成に必要な範囲を越えて取り扱わず、匿名化されたデータの解析を行った。

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© 2019 日本理学療法士協会
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