主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
腰痛は職業性疾病の6割を占める労働災害となっている。運輸、生産業とともに介護、看護職の腰痛発生率は高く、2013年に厚生労働省は「職場における腰痛対策指針」を改訂し適応範囲を福祉・医療分野における介護・看護作業全般に拡大した。また健康日本21第2次において生活習慣予防などのために運動習慣、活動量の増加を目標としている。当院においては今まで看護師に対して移乗動作介助の指導などを行ってきているが、充分な指導ができていないのが現状である。今回、今後の腰痛予防指導を充実させる目的で当院の看護師を対象に質問紙を用いて調査を行った。
【方法】
当院の脳神経外科・神経内科、整形外科、外科、内科所属の看護師、看護助手を対象に、自己記入式質問紙を配布した。内容は腰痛の有無、腰痛の程度(NRS)、生活習慣、患者の介助量、腰痛の原因と考えられる業務、作業姿勢、自由記載とし、腰痛の有無とその他項目をχ2検定、マンホイットニー検定を使用し関連を調べた。有意水準は5%とした。
【結果】
アンケート回収率は86%(607/706)。607名のうち、回答に欠損のあった143名を除外した464名(女性448名、男性16名)を検討対象とした。年齢は20歳代109名(23.5%)、30歳代142名(30.6%)、40歳代140名(30.2%)、50歳代66名(14.2%)、60歳代7名(1.5%)であった。現在腰痛があると回答した者は280名(60%)であった。腰痛の程度はNRSにて軽度が101名(36%)、中等度が132名(47%)、重度が47名(17%)であった。腰痛と喫煙の有無、作業姿勢の種類(排泄、ケア)、介助量、重度介助の患者に対して1人介助の有無に有意差(p<0.05)がみられた。
【結論】
今回の結果より当院の腰痛を持つ看護師は61%であった。また、運動習慣のない者は81.8%と非常に多い実態が明らかとなった。日本整形外科学会によると運動習慣がないことは腰痛発症の危険因子とされている。さらに中村らは運動習慣及び喫煙という生活習慣は腰痛発症に影響を与える重要な要因であると述べており、本検証でも同様の結果が得られた。これまで当院では腰痛予防対策として移乗動作指導を実施していたが、今回の調査より作業姿勢や介助量、重度介助の患者に対して1人介助の有無に有意差がみられた。このことから指導内容に不十分な点があったと考えられ、今後は介助動作だけでなく職員自身のセルフケアについても指導していくことや、ベッド周辺の環境の確認や福祉用具の適切な使用の知識や適応の指導、排泄やケア時の姿勢などに注目しながら介入していくことが必要である。また、職員の意見としてリハビリ室を開放しストレッチや歩行、ランニングマシーン等使用し運動をしたいという意見や、腰痛体操を教えて欲しいといった意見も多くあった。リハ室の開放時間を確保するなども考慮し運動習慣の定着化についても実施していきたい。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究を実施するにあたり対象者には文書にて研究の主旨、内容について説明を行い同意を得た上で、個人情報の取り扱いに充分に留意しアンケートを実施した。