主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
身体不活動時間の増大は、さまざまな疾患の発症リスクを高めるとともに、将来的なフレイル発症にも影響を及ぼす。そのため、高齢期における身体的フレイルを予防するためには、身体活動量の維持および向上が重要である。しかしながら、身体不活動の時間を異なる強度レベルの身体活動に置き換えた際に、フレイルのリスクをどの程度軽減できるかに関しては、十分検証されていない。そこで本研究では、身体不活動の時間を身体活動に置き換えた際のフレイルリスクの軽減効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
本研究のデザインは横断研究である。対象は地域在住の65歳以上の高齢者とし、認知機能障害、神経疾患等を有する対象者は除外した。J-CHSの5項目の基準(体重減少、筋力低下、疲労感、歩行能力低下、運動習慣欠如(活動低下))をもとに、1項目該当をプレフレイル、3項目以上該当をフレイルとして判定を行った。身体活動量の評価には、リストバンド型の身体活動量計Actiband (TDK社製)を使用し、2週間計測を行った。睡眠を除く身体不活動(1.5METs以下)の時間、低強度(1.5~3.0METs)および中強度以上(3METs以上)の活動時間を算出した。解析では、不活動時間を異なるレベルの活動時間に置き換えた際のフレイル該当のリスク変動を分析するため、Isotemporal substitution(IS)モデルを用いたロジスティック回帰分析を行った。本研究では、身体不活動時間30分を、低強度もしくは中強度以上の身体活動時間30分に置き換えた際のフレイル発症リスクの変化を分析した。非調整モデルによる解析の後、年齢、性別、教育歴を変数として投入した調整モデルの解析を行った。
【結果】
887人(平均年齢73.6±6.4歳)が解析対象となった。ロバスト群(360名: 40.6%)、プレフレイル群(477名: 53.8%)、フレイル群(50名: 5.6%)の1日あたりの不活動時間の平均は、それぞれ8.1時間、8.5時間、11.4時間、低強度活動時間は、それぞれ8.0時間、7.8時間、5.1時間、中強度以上活動時間は、それぞれ45分、41分、21分であった。フレイルの有無を従属変数としたISモデルによる解析の結果、非調整モデルでは、身体不活動時間30分を低強度活動に置き換えた場合のフレイルリスクは、オッズ比(OR) 0.84 (95%CI: 0.79 - 0.90, p < 0.01)、中強度以上の活動に置き換えた際のリスクは、OR 0.58 (95%CI: 0.37 - 0.92, p < 0.05)となった。調整モデルでは、それぞれOR 0.86 (95%CI: 0.80 - 0.93, p < 0.01)、OR 0.75 (95%CI: 0.48 - 1.18, p = 0.21)となった。
【結論】
身体不活動の時間を低強度活動に置き換えることで、フレイルのリスクの軽減につながることが示唆された。なお、因果関係の証明には今後の縦断的な調査が必要である。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究の内容を紙面上にて説明した上、同意書に署名を得た。なお本研究は兵庫医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号201705-095)。