主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
サルコペニアおよびダイナペニア高齢者の骨格筋はいずれも骨格筋内脂肪の蓄積が著しく、いわゆる質が低下した状態となっている。しかし、この骨格筋内脂肪をアウトカムとしたような介入研究は十分に実施されておらず、標準化された介入方法は存在しない。本研究の目的は、サルコペニア・ダイナペニア高齢者を対象に、運動療法と栄養療法を併用することによる骨格筋内脂肪抑制および筋力増強効果を検証することである。
【方法】
研究デザインは無作為化比較対照試験であり、Intention-to-treat解析にて分析を行った。対象は地域在住の要支援高齢者であり、まずサルコペニアおよびダイナペニアのスクリーニング検査を行い、操作的定義の基準(AWGSの握力低下もしくは歩行速度低下)を満たした上で除外基準に該当しない104名(84.0±5.6歳、女性66%)を研究対象とした。対象者は無作為に4群に分類し(運動+栄養群、運動単独群、栄養単独群、コントロール群)、それぞれ12週間の介入を実施した。運動介入としては、作成した運動指導用のパンフレットに基づき、週2回の頻度で1回30分間の教室型運動を実施するとともに、それ以外の日は自宅で同様の運動を実施するように指導した。運動内容は、上肢・下肢の主要な筋群に対する自重を用いた低負荷レジスタンス運動であった。栄養介入としては、高BCAA配合のタンパク質10gを毎日午前中に摂取するように指導した。介入前後には、大腿前面筋(大腿直筋、中間広筋)の超音波画像計測(得られた画像より各筋のエコー輝度(骨格筋内脂肪を反映する指標)を算出)、膝伸展筋力測定、体組成計測、各種身体機能測定を実施した。
【結果】
運動指導を実施した2群の運動アドヒアランス(運動+栄養群:中央値88.1%(IQR71.1-97.6%)、運動単独群:中央値81.1%(IQR52.4-96.7%))、栄養摂取を指導した2群の栄養アドヒアランス(運動+栄養群:中央値97.6%(IQR70.8-100.0%)、栄養単独群:中央値100.0%(IQR91.1-100.0%))は共に良好であった。いずれの介入にも特筆すべき有害事象は認められなかった。二元配置分散分析により有意な交互作用(介入前後×群)を認めたのは、大腿直筋のエコー輝度および膝伸展筋力であり、いずれも運動+栄養群で最も大きな改善を示した(P<0.05)。身体機能および体組成については、運動+栄養群および運動群で改善傾向は示したものの有意な交互作用は認められなかった(P>0.05)。
【結論】
サルコペニア・ダイナペニア高齢者に対し、運動および栄養の併用療法を実施することによって、骨格筋内脂肪を減少させ筋力を増強させる効果が認められた。しかし、身体機能や体組成を顕著に改善させるような高い効果は認められなかった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、筑波大学人間系研究倫理委員会の承認を得るとともに、対象者には書面および口頭にて十分な説明を行い実施した。