主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに】
理学療法学生にとって病院などの医療機関で行う臨床実習は実際の患者に触れ,大学で学んだ講義内容や習得した技能を活かす良い機会であり,また,多くの臨床家から指導を受け,幅広い視点や社会人としての規律を学ぶことができるため,実習後の成長は著しい。一方で,不慣れな実習環境のため精神的ストレスは大きく,課題などに難渋し,将来への不安を抱える学生も存在する。本研究では,過去5 年間に本学理学療法学科において,実習後のアンケート結果から学生の実習に対する意識・満足度を調査し,実習満足度へ影響を与える因子を抽出することを目的とする。
【方法】
昭和大学保健医療学部理学療法学科において,2013 年度から2017 年度までの5 年間に臨床実習を行った学生を対象とし,評価実習,総合臨床実習I,総合臨床実習II の実習後に行う無記名のアンケート結果を用いた。実習満足度において,「大変満足」および「満足」を満足群,「大変不満」および「不満」を不満群とし2 群に分け,調査項目として学生因子(評価・治療,オリエンテーション,リスク管理に関する自信,積極性やマナーなど適正に関すること),指導者因子(指導方法や成績への満足感,指導時間や指導者人数,実習施設への勤務希望など),大学因子(授業との整合性)に関して後方視的に比較検討した。
【倫理】
本研究は,本学保健医療学部倫理委員会において承認を得た(承認番号第420 号)。
【結果】
2013 年度から2017 年度まで,のべ511 件の実習が行われており,実習後アンケートの回収率は446 件(87.3%)であった。実習満足度は424 件(95%)であり,不満群では,評価の際の知識に対する自信(満足群 vs 不満群= 61% vs 23%,p = 0.0004),評価の実施に対する自信(60% vs 32%,p = 0.0085),目標設定に対する自信(46% vs 23%,p = 0.0308),治療の実施に対する自信(49% vs 27%,p = 0.0461),患者へのオリエンテーションの自信(67% vs 45%,p = 0.0378),リスク管理に対する自信(49% vs 23%,p = 0.0169)が有意に低かった。一方で,実習施設への勤務希望(75% vs 82%,p = 0.5279),実習指導者の指導方法への満足感(91% vs 81%,p = 0.1488),成績への満足感(95% vs 86%,p = 0.0784)は不満群でも高かった。また,大学の授業内容との整合性があったと感じたものは83% であった。
【考察】
臨床実習の満足度は95% と高かったが,評価や目標設定,治療の実施,オリエンテーション,リスク管理などの実習中に行う手技に自信が持てない学生は実習に不満を感じていた。指導方法や成績は実習満足度に影響なく,臨床技術の習得が満足度を反映していた。実習中に患者と接する機会を増やし,自信を持って評価や治療技術が行えるなど,自分の成長を実感できる実習体制が学生の満足度を高めることが示唆された。
【結論】
学生の臨床実習に対する満足度へ影響を与える要因は,臨床実習における知識や技術に対する自信であった。