理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: OE-19
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口述発表
臨床経験3年末満の臨床評価能力において充実させるべき項目の検討
─主観的評価表を利用して─
徳永 剛今井 孝樹流合 慶多
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抄録

【はじめに】

クリニカルクラークシップの導入や日本理学療法士協会の教育ガイドラインの改訂など,教育の在り方が変革しつつある中,若手理学療法士の臨床教育については不透明な部分が多い。特に理学療法士の特徴である臨床評価能力の向上は急務の課題であるが,若手理学療法士の現状を調査した先行研究は少ない。そこで今回,主観的評価表を利用し,臨床評価能力の中で臨床教育を充実させるべき項目を調査した。

【対象及び方法】

対象は,当院の臨床経験3 年末満の理学療法士30 名とした。30 名中29 名の回答(96.7%),29 名中28 名の有効回答(96.6%)であった。先行研究を基に作成した臨床評価能力の主観的評価表により1:多くの指導や助言が必要,2:ある程度の指導や助言が必要,3:他者の指導が無く実施,4:他者の指導が無く実施でき,後輩や理学療法専攻学生の模範になるほどの高い能力ありの4 段階で回答を得た。①評価項目は評価内容の選択,検査・測定の実施,姿勢・動作観察及び分析,統合と解釈,ゴール設定,治療プログラム立案,治療効果判定の7 項目とした。それぞれの項目間で多重比較を実施した。②評価項目の中で,今後学びたい,勉強会に参加したい項目について複数回答を実施し,項目ごとに百分率(今後学びたい,勉強会に参加したいと回答した人数/ 有効回答者28 人× 100)にて算出した。統計学的検討はSteel-Dwass 法を用いて,危険率5% 末満を有意差ありと判定した。

【倫理的配慮・説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づき,対象者に本研究の趣旨を書面にて説明し,同意を得て実施した。

【結果】

①多重比較では,姿勢・動作観察及び分析が評価内容の選択,検査・測定の実施,ゴール設定より有意に低値,統合と解釈が検査・測定の実施,ゴール設定より有意に低値,治療プログラム立案が検査・測定の実施より有意に低値であった。②今後学びたい,勉強会に参加したい項目は評価,評価内容の選択46.4%,検査・測定の実施32.1%,姿勢・動作観察及び分析92.8%,統合と解釈50.0%,ゴール設定 9.5%,治療プログラム宣案 10.7%,治療効果判定 32.1% であった。

【考察】

特に他項目より低値を示している項目は,姿勢・動作観察及び分析と統合と解釈であった。吉塚らによると「動作分析」「統合と解釈」「間題点抽出」は臨床教育者と学生の多くが共通して困難感を示したと報告している。本研究の結果においても,姿勢・動作観察及び分析,統合と解釈が有意に低値を示しており,当院における臨床経験3 年末満の理学療法士は多くの助言を必要と感じている項目であることが示唆された。また今後学びたい,勉強会に参加したい項目においても姿勢・動作観察及び分析が95.1% と非常に高値を示した。このことからも臨床上,姿勢・動作観察及び分析に必要性を感じている理学療法士が非常に多いことが示唆される。姿勢・動作観察及び分析能力向上は統合と解釈やゴール設定,治療効果判定などある程度の習熟を要する評価項目の能力向上の前段階としても重要である。以上より臨床教育では姿勢・動作観察及び分析を,まずは充実させることが重要であると考える。姿勢・動作観察及び分析能力を向上する手段としては,上司や先輩からの直接指導や職員間での治療見学など,日本理学療法士協会でも推奨されているOn-the-job Training の充実が非常に重要であると考える。

【結論】

若手理学療法士の臨床教育において充実させるべき項目は姿勢・動作観察及び分析である。

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