理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-N-1-1
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口述
Cough Peak Flow(CPF)とSniff Nasal Inspiratory Pressure(SNIP)における測定誤差
梅原 里歩鈴木 良和上出 直人中園 哲治市川 貴文藤橋 紀行平賀 よしみ福田 倫也
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抄録

【はじめに・目的】

運動ニューロン疾患において呼吸筋筋力の低下や気道クリアランス能力の低下は生命予後に直結する.そのため,早期から呼吸機能を評価し呼吸機能低下を早い段階で把握するとともに必要な予防策を講じることは重要である.臨床における呼吸機能評価に関しては,気道クリアランス評価として咳嗽時最大呼気流速(CPF),横隔膜筋力の評価として鼻腔吸気圧(SNIP)がある.しかしCPFやSNIPにおける測定誤差の程度については明らかになっていない.測定誤差を明確にすることは,測定値の解釈において極めて重要な情報である.本研究の目的はCPF,SNIPを用いた呼吸筋筋力の測定限界を明らかにするため,各測定時に生じうる誤差の程度を明らかにすることとした.

【方法】

対象は健常成人27名(年齢24.0±5.8歳,男性16名,女性11名)とした.測定項目はCPF及びSNIPを実施した.CPFはピークフローメーター(ASSESS社)とフェイスマスクを使用して測定した.SNIPは,口腔内圧計(PRM01:Micro Medical Ltd.)と測定用プローブ(NPLG00:Micro Medical Ltd.)を用い,対象者の最大吸気時の鼻腔内圧の測定を行った.各測定項目において検者内信頼性検証のため同一検者が検査を3回ずつ施行した.信頼性評価のため級内相関係数(ICC(1,1)),(ICC(1,3))を算出した.なお,有意水準は5%とした.さらに測定限界の評価のため,最小可検変化量(MDC)測定値に対する誤差の割合を示すため%MDC(=100×MDC/平均測定値)を算出した.MDCはICCを用いて求めることが可能であり,単一測定値のMDCはICC(1,1)を用いて三回測定の平均値のMDCはICC(1,3)を用いて算出された.

【結果】

ICC(1,1)は,CPFで0.90,SNIPで0.89であり,ICC(1,3)は,PCFで0.96, SNIPで0.96であった(p<0.05).MDCはCPFの単一測定値で129.3L/min,三回平均値で77.6 L/minであり,SNIPは単一測定値で19.8㎝H2O,三回平均値で11.9㎝H2Oであった.%MDCはCPFの単一測定値で25.6%,三回平均値で15.3%であり,SNIPは単一測定値で32.4%,三回平均値で19.5%であった.

【考察】

単一測定値では,CPF測定において約130L/min,SNIPでは約20㎝H2Oの測定誤差があることが示された.これは,測定値の変化25%程度に相当し,誤差としては小さな値ではないと考えられた.また,本研究は健常人を対象としており,運動ニューロン疾患患者の測定では,誤差が拡大する可能性もあり,測定値の解釈には注意を要すると言える.少なくとも,CPFやSNIPの測定誤差を減らすためには複数回の測定を行い,その平均値を使用することが適切であると考えられた.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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