理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-N-1-2
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口述
Fisher症候群にGuillain Barre症候群を合併し,人工呼吸器管理を要した2症例の急性期経過と最終ADLの違い
山内 渉広田 晋長谷川 洋介若宮 有加莉林 祥司柴 貴志河口 彰員酒井 亜未
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抄録

【はじめに・目的】

Fisher症候群(FS)に合併するGuillain Barre症候群(GBS)は, 単独のGBSと比べ,予後不良因子である人工呼吸器管理(レスピ管理)を要する症例が多い.

予後不良因子を持つGBSは1~2年に渡り機能改善を認めるが,それらの最終ADLに関する報告は様々であり,急性期において最終ADLを予測するのは難しい.

今回FSにGBSを合併し,レスピ管理を要した2例を経験したため,急性期経過と最終ADLの違いについて報告する.

【症例紹介】

症例A (50代女性)・症例B(60代男性)ともに,入院前に上気道炎症状有り,FSの3徴である外眼筋麻痺・複視・運動失調を認め,入院となった.症例Aは,第0病日より血漿交換療法(PE)を開始したが,四肢筋力低下・呼吸筋麻痺・腱反射消失を認め,レスピ管理となりGBSと診断された.症例Bは,第0病日より免疫グロブリン療法開始,第2病日より四肢筋力低下・呼吸筋麻痺を認め,レスピ管理となりGBSと診断された. 第12病日よりPE開始した.

【経過】

症例Aは,当初MRC score上肢4点/下肢10点,レスピ管理期間は16日間であった.離床状況と運動機能は,第16病日より端座位を開始,頸部不安定・体幹失調(躯幹失調ステージⅢ)のため介助を要した.第30病日より車椅子乗車を開始,移乗時は両下肢運動失調に伴う膝折れが出現した.第43病日より歩行exを開始,膝折れは残存しているものの介助下にて10m移動可能,第52病日より独歩見守りで室内トイレ移動(5m未満)が可能となった.第64病日, MRC score上肢14点/下肢20点, Functional Grade(FG):1,体幹失調(ステージⅡ)残存,10m歩行は6.4秒,連続150m歩行可能,B.Iは80点となり,第66病日転院した.156病日に退院し,職場復帰を果たした.

症例Bは,当初MRC score上肢4点/下肢6点,レスピ管理期間は105日間であった.離床状況と運動機能は,第41病日より端坐位経由で車椅子乗車を開始,第115病日より歩行ex (5m未満)を開始,体幹失調(ステージⅢ)と深部感覚障害により,膝折れが顕著で介助を要した.第132病日より車椅子でのトイレ移動を開始,第138病日,MRC score上肢6点/下肢14点,FG:3,四肢運動失調・体幹失調(ステージⅡ)・深部感覚障害残存,B.Iは45点となり転院,第236病日に退院となった.自宅復帰して2年経過したが,複視,深部感覚障害,四肢運動失調が残存,独歩は膝折れによる転倒が頻回で,ADL全般に介助を要した.

【考察】

発症時,症例A・BともにFG:6,6カ月後の自立歩行不可を予測するmEGOSで,症例Aは55%,症例Bは65%であり,どちらも歩行獲得に難渋することが予想された.症例Aは64病日でFG:1まで改善し,最終的に独歩を獲得した.一方,症例Bは138病日でFG:3までの改善,最終的に軽介助歩行を獲得するに留まり,ADL全般に介助を要した.この2症例における急性期経過の違いは①レスピ管理期間②FG改善度である.レスピ管理の有無だけでなく,レスピ管理期間やFG改善度は,最終ADLを予測する際に参考になる可能性がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

本発表は,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者に発表の内容について十分な説明を行い,紙面にて同意を得た上で実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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