理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-B-11-9
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外来リハでHonda歩行アシストを用いて歩行能力が改善した慢性期脳卒中患者の一症例
武田 好史高木 志仁上村 悠月池田 裕哉
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抄録

【はじめに】

近年、リハビリテーション領域において「ロボットリハ」という新たな治療方法が開発されている。当院では「Honda歩行アシスト」(以下歩行アシスト)を開院時より導入している。今回、外来リハにて約1年半通院していた慢性期脳卒中患者に対し、当院にて新たな介入方法として歩行アシストを使用した。1ヶ月の使用期間で歩行能力の改善がみられたため報告する。

【症例紹介】

60歳代後半男性。左視床出血右片麻痺を発症しA病院へ入院。発症後1ヶ月後にリハ目的でB病院へ転院。5ヶ月後退院。その後、B病院の外来リハに週2回通院。発症後約2年経過後、当院の外来リハへ移行。理学所見として、BRS:上肢Ⅳ、手指Ⅴ、下肢Ⅲ、SIAS:下肢運動項目股3‐膝2‐足1点。ROM:麻痺側股関節伸展0°、足背屈5°と制限あり。歩行はオルトップAFO装着し屋内外T字杖歩行自立していたが、分回し歩行で麻痺側股関節の伸展はみられない状態であった。FIM:122点。高次脳機能障害なし。

【経過】

歩行アシスト開始前はPTの介助のもと、装具なし歩行や独歩での歩行練習を行っていたが、歩容の改善はみられておらず、屋外歩行自立だが10ⅿ歩行において20秒以上かかっていた。歩行能力の改善を目標に歩行アシストを使用し、週2回40分間外来リハを実施した。歩行アシストトルクの設定は、開始後、歩行時の左右対称性や屈伸角度の評価結果を基に調整を行った。歩行評価は、リハ前・リハ後に歩行アシストを装着した状態で、アシストなしの設定での10m歩行を行い、治療効果を確認した。約1ヶ月経過時、10ⅿ歩行が13秒と改善がみられ、歩容では麻痺側立脚期での股関節の伸展角度の増加、左右対称度の改善がみられた。

【考察】

「脳卒中ガイドライン2015」では回復期リハ終了後の慢性期脳卒中患者に対して、筋力、体力、歩行能力などを維持させ、社会参加促進、QOLの改善を図ることが強く勧められている。本症例は発症から約2年経過しており、麻痺側の随意性改善など著明な機能回復はほとんど期待ができないと思われた。しかし、歩行アシスト開始後、1ヶ月間で10ⅿ歩行は13秒に改善がみられ、歩容においても股関節伸展角度の改善、左右対称性の改善がみられた。大畑は、歩行アシストについて「装着者の股関節運動を計測し、独自の制御に基づいて立脚期の倒立振り子や遊脚期の遊脚振り子に影響を与え、適切な歩行を行えるように設計されている。」と述べている。PTの介助は、毎回どの程度、どの運動方向への介助を行っているか明らかではなく、患者に効率的な反復運動を行うことは困難と思われる。本症例において、歩行アシストによる正確な倒立振り子運動の運動感覚入力を行うことで歩行速度や歩容の改善に繋がったと思われる。慢性期脳卒中患者に対する歩行アシストを用いた歩行練習が歩行能力の改善に有効であることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づき、本発表に際し、症例には発表の趣旨など十分な説明を行い、同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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