理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-B-20-1
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脳障害の急性期における臥床姿勢の膝関節良肢位の検証
久下 剛人目片 幸二郎木下 恵介戸田 一潔
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抄録

【はじめに・目的】

 脳障害後の患者は意識障害や高次脳機能低下により麻痺肢の管理が困難となるためポジショニングが用いられる。看護師や理学療法士は良肢位保持や安楽な呼吸の確保を目的に、セミファーラー位を用いることが多い。しかし、関節や筋機能の状態によっては、セミファーラー位の選択が各関節における機能改善の遅延や妨げになる例もあるのではないかと考えている。今回は膝関節に着目し、セミファーラー位の膝関節軽度屈曲位について膝蓋腱反射(Patella tendon reflex:以下PTR)と内側ハムストリングス腱反射(Hamstrings tendon reflex:以下HTR)を用いて検証したので報告する。

【症例紹介】

 症例の選択は平成29年1月から平成30年3月に理学療法を担当した脳障害患者35例中、PTRとHTRを比較した際に、HTRの亢進の程度が大きい2例を対象とした。その理由は、膝関節屈曲位保持によりハムストリングスの筋緊張亢進が筋短縮の可能性を増大させると考えたからである。方法は膝関節屈曲位保持とせず、knee braceを用いて臥床中は伸展位保持とした。また、腱反射亢進と筋緊張亢進が必ずしも相関しているわけではないが、高次脳機能低下のある患者などは随意的に筋を弛緩出来ないことがあるため筋緊張の精査が難しいことから、評価指標として腱反射を用いた。

【経過】

 膝関節伸展位保持を行った2例ともに介入から16日目、19日目でHTR優位の亢進は消失し、PTR優位の亢進を認めた。HTRは転院まで再び亢進することはなかった。また、膝関節に拘縮や動作を妨げるような異常な筋緊張亢進を招くことはなかった。

【考察】

 膝関節伸展位保持を行った2例ともにHTR優位の亢進は消失し、PTR優位の亢進を認めた。この結果から、生理学的見地では痙縮の治療と考えることは出来ないが、膝関節を伸展位保持することによりハムストリングスの過度の筋緊張亢進を抑制することの可能性はあると考えている。今後は伸展保持時間や期間などの検証も考えている。また、膝関節に拘縮や動作を妨げるような異常な筋緊張亢進を招くことはなかった。この結果から、PTRよりHTRが亢進している患者に関しては良肢位として膝関節伸展位保持が有効である可能性がある。今後は症例数を増やし検証する。今回の検証よりセミファーラー位は35例中33例で拘縮等なく経過し、良肢位であることが再認識された。また、後藤は脳障害後の下肢は膝関節伸展筋が優位に随意収縮の出現を認めると述べている。この報告からもセミファーラー位は膝関節伸展筋の異常な緊張亢進が抑制できる可能性を考えている。しかし、今回の2例の様にHTRが優位に亢進を認める例に対しては下肢の肢位を慎重に検討する必要があると考えた。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に従い、対象者の同意を得た上で実施した。本研究における利益相反はありません。

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© 2019 日本理学療法士協会
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