理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: K-3-3
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企画演題
GEAR歩行練習が慢性期脳卒中患者の歩行能力に与える影響
―無作為化比較パイロット試験―
中野 周平荻野 智之金田 好弘山口 達也上垣 亮太森﨑 勝久道免 和久
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キーワード: GEAR, 慢性期脳卒中, 歩行能力
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抄録

【はじめに・目的】

近年,歩行補助ロボットを使用した歩行練習が脳卒中患者の歩行能力を向上するアプローチとして注目されている.歩行練習アシスト(GEAR)は,トヨタ自動車パートナーロボット部と藤田保健衛生大学が共同で開発した練習支援型リハビリテーションロボットである(GEAR後継機の「ウェルウォークWW-1000」は,医療機器として承認され2017年秋よりレンタル開始している).GEARの効果は,従来装具を使用した歩行練習よりも脳卒中片麻痺患者の歩行自立度を効率よく改善することが報告されているが,主に亜急性期の患者を対象としており,慢性期症例に対する効果は十分に検討されていない.

本研究の目的は,慢性期脳卒中患者に対するGEARを用いた歩行練習が,歩行能力の改善に有効かを検証することである.

【方法】

対象は,自力での歩行が可能な慢性期脳卒中患者11名(男性10名,女性1名,平均年齢:64.0±7.7歳,平均身長:166.3±5.7cm,平均体重:67.8±12.4kg,疾患内訳:脳出血8名,脳梗塞3名)であった.対象者は,封筒法を用いてランダムにGEAR歩行練習群(RAGT)とトレッドミル歩行練習群(TGT)に割り付けた(RAGT:5名,TGT:6名).両群とも歩行練習は1日2単位とし,週5回,4週間(合計20回)実施した.介入前後で10m歩行速度や重複歩距離,ケイデンス,Timed up and go test(TUG),6分間歩行テスト(6MWT),Global rating of change scale(GRC),健康関連QOL(SF-8)を測定し,両群で比較した.統計解析は,介入前後の比較は対応のあるt検定もしくはWilcoxon検定を,群間比較は2標本t検定もしくはMann-Whitney検定,χ2検定を用いた.有意水準は5%とした.

【結果】

両群でベースライン時の特徴(年齢,性別,身体組成,疾患,麻痺,発症期間,認知機能,歩行能力)に有意差はなかった.RAGTでは,介入前後で6MWT(204.9±56.0→227.2±49.7m)やGRC(2.8±1.1)が有意に増加した(p<0.05).TGTでは介入前後でGRC(1.7±0.7)は有意に増加したが,その他の項目は有意差はみられなかった.一方,トレーニングの平均歩行距離は,RAGTと比べてTGTで有意に多かった(781.2±239.3 vs 1506.5±455.8m,p<0.05).

【考察】

トレーニングの平均歩行距離はTGTで圧倒的に多い結果にも関わらず,RAGTで6MWTは有意に増加していた.この理由として,GEARは精巧なアシスト調節と多数のフィードバック機能などから対象者の適切な運動レベルでトレーニングが可能であることが報告されており,今回もGEARの運動学習に基づいた利点が影響したと考えられた.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,兵庫医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2710).また,対象者に対して本研究の目的,方法を説明し,書面にて研究参加への同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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