理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-029
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口述発表
チリ共和国での青年海外協力隊としての地域への関わり
-(経験報告)-
奥田 裕
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抄録

【はじめに】

 チリ共和国(以下チリ)は近年の経済成長が著しく、2018年1月には経済協力開発機構(OECD)から発表された開発援助委員会(DAC)援助受取国・地域リストから外れ、現在は高所得国として分類されるようになった。独立行政法人国際協力機構(JICA)ボランティアも派遣されているが、徐々に縮小しているのが現状である。今回、JICA青年海外協力隊として、チリで活動し、地域に向けての予防事業を主に実践した。今後の海外ボランティアに向けての活動紹介、日本の地域理学療法への提案を目的に以下報告する。

 

【取り組みについて】

 配属先は人口約1万人のチリのマウレ州クリコ県ウアラニェ市の市役所。主な目的は市民の健康増進である。活動として、①個室での個別理学療法、②訪問理学療法、③小学校での理学療法、④高齢者会議での活動、⑤障がい者団体での理学療法、⑥その他を実施した。健康増進目的で、ボランティアが帰国した後も継続して活動できるように、「職場での体操」「健康について」「姿勢について」の3種類の冊子を作製した。その他の活動として、市役所職員、市内スーパーマーケットやレストランに勤務する労働者に対しての健康指導や、市内で開催された健康予防フェスタで作成したパンフレットの配布等を行った。

 

【最後に】

 前述したようにチリは被援助国から脱し、ボランティアの関わりも他の途上国とは異なる。他国ボランティアは小児分野での関わりが多い中、チリボランティアは高齢者への関わりが増えている。チリの理学療法士の就業年数は5年間であり、知識技術ともに高く、自信をもって働いている。問題点としては、大学を卒業した後に理学療法士として勤務できる病院や施設が少ないことである。アジアや中南米諸国の途上国は高齢化が進んできている国も多く、今回の関わりと類似した要請が増えることも考えられる。今回の報告がその一助となればと思うとともに、日本の地域への関わりに対する一助ともなればと思う。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

発表に関して、八千代リハビリテーション学院倫理委員会の承認を得た(承認番号Y18024)。

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© 2019 日本理学療法士協会
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