理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-031
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口述発表
当院地域包括ケア病棟患者における退院先に影響する要因の検証
荒井 一樹飯倉 大貴戸田 愛弓寺尾 健須藤 真児近藤 国嗣
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抄録

【はじめに・目的】

地域包括ケア病棟は, 急性期治療後及び在宅における療養患者等の受入並びに在宅支援等を行う機能を有す病棟または病室とされている. 地域包括ケア病棟の施設基準の一つに在宅復帰率7割以上があり, 効果的な在宅復帰支援が求められているが, 在宅復帰に関連する要因の報告は少ない. そこで本研究では, 当院地域包括ケア病棟に入院した患者を対象に, 退院先に関連する要因を検証することを目的とした.

【方法】

対象は2017年8月〜2018年3月までに当院地域包括ケア病棟に入院した患者279名のうち, 入院前居住地が自宅以外の症例, 死亡例, 本研究で用いた調査項目にデータ欠損があった症例を除外した253名とした. 調査項目は, 基本属性 (年齢, 性別, 疾患, 入院日数など) , 世帯構成, 退院時介護度, 退院先, 退院時FIM (運動項目, 認知項目, 合計点) とし, 情報は後方視的に診療記録等から収集した. 統計解析は, 退院先に関連する要因を検証するため, 多重ロジスティック回帰分析を用いた. 転帰先 (1: 自宅群, 0: 非自宅群) を従属変数に, 退院時FIM運動項目, 配偶者の有無, 入院日数, 同居人の数を説明変数に投入した. なお, 説明変数は先行研究を参考に抽出した. 解析には, 統計ソフトR 3.4.1を用い, 有意水準は5%とした.

【結果】

対象者は自宅群201名 (平均年齢77.6 ± 11.0歳, 平均入院日数34.6 ± 17.6日) , 非自宅群52名 (平均年齢81.6 ± 9.9歳 , 平均入院日数38.2 ± 19.5日) であった. 多重ロジスティック回帰分析の結果, 自宅退院に関連していた要因として, 退院時FIM運動項目 (オッズ比 [OR] = 1.05, 95%信頼区間 (95%CI) : 1.03-1.03) , 配偶者の有無 (OR = 2.73, 95%CI: 1.27-5.88) が抽出された.

【結論】

地域包括ケア病棟患者において,退院時FIM運動項目が高く,同居人に配偶者がいる者は自宅退院する確率が高いことが示された.一方で,退院先を決定する際に,配偶者がどのような役割を担っているかは不明である.今後は,退院先を決める際の意思決定の過程を明らかにし,効果的な退院支援につなげていきたい.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院倫理審査会の承認後, ヘルシンキ宣言に則り, 入院時に患者と家族より包括的同意を得てから開始した. 得られたデータは匿名化し個人情報が特定できないように配慮した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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