理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-062
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ポスター発表
自宅退院患者の追跡調査結果から
~活動的な地域生活を再獲得するために~
佐藤 沙耶花
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キーワード: E-SAS, 自宅退院, 生活範囲
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抄録

【はじめに、目的】入院中のリハビリテーションは患者の退院後の生活を見据え、運動機能の改善のみでなく、活動的な地域生活の営みの獲得を意識した上でゴール設定を行い治療にあたることが原則といえる。一方で、入院中に実施したアプローチが適切であったか否かの検討には退院後の患者の経過確認が有用と思われるが、実際に退院後の患者の状況について知る機会は少ない。本研究の目的は、退院後の患者の生活状況について追跡調査を行い、活動的な地域生活を再獲得するために、入院中から特に意識して診療に臨むべき点について検討することである。

【方法】対象はH28年12月からH30 年2月までに自宅退院した患者のうち、意思疎通がスムーズに可能であり、かつ当院外来受診または通所リハビリテーションを利用し追跡調査が可能であった15名(男性11名、女性4名、中央値69歳)とした。退院後の調査は退院1ヶ月後、及び退院3か月後の計2回行った。調査項目は、日本理学療法士協会が開発したElderly Status Assessment Set(以下、E-SAS)、及びFIM、身体機能評価(TUG、握力、片脚立位)とし、さらに退院後の生活状況について本人及び家族から聞き取り調査を行った。2回の測定後、E-SASの総得点に5点以上の改善がみられたものを改善群、それ以外のものを維持群と分類した。E-SASの下位項目の得点及び調査項目における変化量を算出し、マンホイットニーのU検定を用い2群間で比較検討した(有意水準5%)。

【結果】対象を分類した結果、改善群は7名(男性5名、女性2名、中央値69歳)、維持群は8名(男性6名、女性2名、中央値60.5歳)であり、両群間の年齢に有意な差はみられなかった。E-SASの下位項目における群間比較では、「生活の広がり」の項目において改善群は14点(13.5―21.0)改善した。一方、維持群の変化量は-0.5点(-8.0―3.0)であり、両群間に有意な差が確認された。FIM及び身体機能評価(TUG、握力、片脚立位)における群間比較では、いずれの項目にも有意な差は認められなかった。退院後の生活状況についての聞き取り調査では、良好群では外来受診や通所リハビリテーション等以外にも外出機会があり、また自主的に運動を継続するなど自己管理を継続しているものが多くみられた。

【結論】今回の結果から、退院後に活動的な地域生活を送るために、年齢や身体機能の影響よりも、患者自身の外出頻度が高い事や、具体的な目標を持って活動している事が示唆された。入院中から患者の退院後の目標設定を行う事、更に家族の協力を積極的に得ながらアプローチをする事が重要と思われた。本研究の問題点として、対象者が当院に通院している患者に限定していることが挙げられる。今後、対象を広げ追跡調査を行なうことが必要と考えられた。

【倫理的配慮,説明と同意】今回の研究発表にあたり、ヘルシンキ宣言に則り、本人及び家族に対し、十分に説明し同意を得た。なお本研究で使用した全ての情報は通常の診療行為の過程で得られたものであり、個人情報の流出防止、匿名性の保持について十分に配慮を行った。

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© 2019 日本理学療法士協会
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