理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-063
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ポスター発表
訪問リハビリテーション終了3ヶ月後における社会参加の継続状況
-FAIの量的分析および中断要因の質的分析による混合調査ー
中原 彩希尾川 達也喜多 頼広
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抄録

【はじめに・目的】

訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)では,社会参加を目指した終了型サービスが推奨されている.しかし,訪問リハ終了後の社会参加の継続状況は調査されておらず,特に重症者では他者の支援が必要となるため,社会参加を中断する可能性も高いと考える.そこで本研究では,訪問リハ終了3ヶ月後の社会参加の継続状況と中断要因について歩行能力別に検討することを目的とした.

【方法】

対象は平成29年4月から平成30年2月までの訪問リハ終了者の内,調査票の回答困難な者を除いた56名とした.追跡調査の方法は,終了3ヶ月後にFrenchay Activities Index(FAI)の調査票を対象者に郵送し,回答を依頼した.回答後、担当療法士が対象者に電話し,終了時に実施していた社会参加の継続状況,中断した場合は理由を聴取し,診療録に記録した.尚,本研究の社会参加の定義は「組織・集団への参加,自己完結する活動,身近な人から支援を受けて行う活動を通した社会との関わり」とし,通所サービス,社会活動,余暇活動,家庭での役割,支援あり活動の5要素と規定した.また,社会参加の中断の判断は5要素の活動頻度や量の低下,非実施とした.分析方法は,終了時の基本情報として年齢,性別,リハ回数,要介護度,FAI ,Functional Ambulation Classification of the Hospital at Sagunto(FACHS)を診療録から収集した.歩行自立度別で比較する為,FACHSの2以下を屋外歩行の非自立群,3以上を自立群とした.各群における基本情報と社会参加の中断割合はt検定とχ2検定,終了時と終了3ヶ月後のFAIはWilcoxon符号付順位和検定を用いた.社会参加の中断要因は質的分析を用い,診療録から逐語録を作成し,中断理由のコード化を行った.その後,近似したコードからカテゴリーを作成し,各カテゴリーを構成している記録単位数を集計した.

【結果】

調査票の回答者54名中(有効回答率:96%),屋外歩行の非自立群が28名,自立群が26名であった.基本情報では,非自立群の方が高齢で(P<0.05),要介護度が高かった(P<0.001).終了時と終了3ヶ月後のFAIの中央値は,非自立群が7.5点→7点で,自立群が18.5点→22点と有意差は無かった.社会参加の中断割合は,非自立群が46%,自立群が38%と有意差は無かった.質的分析の結果,中断要因として10のカテゴリーが生成された.各群の上位3つのカテゴリーは,非自立群では季節の変化(20%),家族の希望(17%),身体機能の低下(17%)であり,自立群では季節の変化(30%),身体機能の低下(26%),精神機能の低下(22%)であった.

【結論】

本研究の結果,歩行能力に関係なく,訪問リハ終了者は一定の割合で社会参加が中断していることが明らかとなった.一方,中断要因は,非自立群では家族,自立群では精神機能と歩行能力別に異なる傾向を示した為,社会参加を継続するには各要因に対処できるような支援が必要である.

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者には,ヘルシンキ宣言に基づき本研究の内容,利益と不利益,個人が特定されないよう個人情報の取り扱いに十分配慮する旨を説明した.その後,書面による同意を得た.また,本研究は西大和リハビリテーション病院の研究倫理員会の承認を得て実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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