理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-104
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ポスター発表
歩行に関連した動作を練習するホームエクササイズプログラムによる歩行自己効力感の改善効果に影響を及ぼす対象者の特徴について
藤井 一弥小林 将生齋藤 徹浅川 康吉
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抄録

【はじめに、目的】

地域在住高齢者を対象とした介入では,筋力増強運動やバランス練習の効果が報告されている一方,歩行に関連した動作を反復することで歩行速度だけでなく,安全に歩く自信といった自己効力感の改善も得られるとの報告がなされている.歩行自己効力感は高齢者の活動量や外出頻度と関連する重要な因子である.そういった報告を受け,我々は高齢者の活動量や外出頻度の向上を目的とした,歩行に関連した動作を練習するホームエクササイズプログラム(以下Home-ex)を開発した.本研究は,今回開発したHome-exにより歩行自己効力感の改善効果が得られる対象者を明らかにするため,Home-exによる歩行自己効力感の改善効果に影響を及ぼす対象者の特徴について検討することを目的とした.

【方法】

対象は屋内外の歩行が自立している65歳以上の地域在住高齢者とした.対象者には3種類のHome-ex(カーフレイズ,ターン練習,ステップ練習)を1カ月間実施してもらいHome-exの効果を確認した.Home-exの実施率が40%未満の対象者は研究対象から除外した.評価は介入前後に実施した.運動機能評価として最大歩行速度,Timed Up and Go test(以下TUG),片脚立位保持時間(以下,片脚立位),Chair Stand-5 test(以下CS-5)を評価し,歩行自己効力感の評価としてmodified Gait Efficacy Scale(以下mGES)を評価した.対象者を,1か月間の介入でmGESに改善があったもの(以下,改善群), mGESに改善がなかったもの(以下,非改善群)の2群に分け,介入開始時の能力を比較し,Home-exによる自己効力感の改善効果が得られる対象者の特徴を検討した.評価項目の比較には,対応のないt検定とMann-WhitneyのU検定を用いた.統計解析にはSPSS statistics25を用い,有意水準は5%未満とした.

【結果】

解析対象者は24名(平均年齢±標準偏差73.3±6.3歳;改善群12名,非改善群12名)となった.各群の年齢,最大歩行速度,TUG,片脚立位,CS-5,mGESの平均値±標準偏差は,改善群ではそれぞれ71.8±4.6歳,1.96±0.30m/s,5.9±1.0s,46.5±39.7s,8.3±1.8s,77.3±20.4点であり,非改善群ではそれぞれ74.8±7.6歳,1.66±0.26m/s,7.0±1.5s,53.6±48.2s,9.7±2.8s,79.7±18.4点であった.介入開始時の比較で年齢(p=0.255)とmGES(p=0.932)では有意差は認めず,有意差を認めた項目は,最大歩行速度(p<0.05)とTUG(p<0.05)であった.介入後の改善群と非改善群のmGESはそれぞれ,87.3±14.8点,68.1±18.1点であり有意差を認めた(p<0.01).

【結論】

今回開発したHome-exによるmGESの改善効果は,介入開始時の歩行能力に影響を受けており,介入開始時の歩行能力が相対的に高い群の方が効果を得られることが明らかとなった.本Home-exは歩行能力の低下をきたしていない高齢者に,早期から実施してもらうことで歩行自己効力感を改善させ,活動量や外出頻度の向上に繋がる可能性がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,平成29年度首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会にて承認されており(承認番号17043),研究に参加した対象者に本研究に関する説明を十分行い,書面にて同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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