理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-054
会議情報

ポスター発表
在宅障害高齢者の生活空間とそれに寄与する要因の探索
川口 徹佐藤 衛佐藤 雅昭一戸 留美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】Bakerらが開発したLife-Space Assessment(LSA)は、高齢者の活動量をとらえる指標として広く使用されている尺度であり、比較的健康な高齢者に対しての調査が多い。LSAよりも屋内での配点が高い指標であるHome-based Life Space Assessmentは障害をもつ高齢者により適しているとされている。今回は、障害をもつ高齢者を対象として、LSA、Hb-LSAを調査し、関連要因との関係について比較することを目的とした。

【方法】A県A市2か所のデイケア利用者113名を分析対象とした。LSA、Hb-LSAの分析方法としてBakerらの方法に基づき、合計得点(LS-CS、Hb-CS)のほかに活動範囲として、介助有りでの最大到達範囲(LS-M、Hb-M)、介助なし、補助具ありでの最大到達範囲(LS-E、Hb-E)、介助なし、補助具なしでの最大到達範囲(LS-I、Hb-E)を算出した。また、デイケアを含め通所サービスの利用はLSAの生活空間レベル5の範囲での活動とみなした。

 身体要因として、握力、大腿四頭筋筋力、片脚立位時間、Timed Up and Go(以下TUG)基本動作能力を評価した。基本動作能力は、寝返り、起き上がり、座位保持、いざり、移乗、立ち上がり、歩行の基本動作能力を全介助=0、一部介助=1、見守り、指示=2、自立=3として評価した。精神要因として、自己効力感を日常生活動作効力感尺度(Self Efficacy Scale:以下SES)を用いて評価した。環境要因として、介護負担感を日本語版Zaritの介護負担感尺度8項目短縮版尺度を用いて評価した。

【結果】対象者(n=113)の平均年齢は82.6±7.2歳であり、女性が約7割を占めていた。介護区分では要介護1、2で半数以上を占め、要支援1、2は20%程度であった。聞き取り調査を実施できたのはn=71(68%)であった。

 身体要因との関連をみると、どちらもすべての基本動作能力と正の相関があった。Hb-CSはLS-CSと比較し、寝返り、起き上がり、いざり、立ち上がり、移乗動作との相関が強かった。また、Hb-CS、LS-CSともに握力、大腿四頭筋筋力との関連がなく、片脚立位時間、TUGとは有意な相関があった。

 精神要因との関連をみると、自己効力感はHb-CS、LS-CSと有意な正の相関があった。活動範囲別では、すべての活動範囲と自己効力感とは有意な正の相関があり、Hb-LSAの介助なし、補助具の使用ありでの活動範囲を示すHb-Eと.56の最も強い正の相関があった。

 環境要因との関連をみると、介護負担感はHb-CS、LS-CSとどちらも有意な負の相関があり、Hb-CSの方が相関が強かった。また、活動範囲別ではHb-Eとの関連が最も強かった。

【結論】障害をもつ高齢者の屋内を基盤とした身体活動量は、寝返りや起き上がりなどのベッド周辺動作の能力との関連が強かった。また、身体機能としては筋力よりもバランス能力を高めることで身体活動量が増加しやすいと考えられた。さらに、ADLの自信度を高めることで、介助なく活動できる範囲が広がりやすく、それによって家族の介護負担感が軽減されやすいことが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】青森県立保健大学研究倫理委員会の承認を得た(承認番号:1718)。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top