理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-006
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口述発表
短期的訪問リハによる心疾患術後の退院後フォロー
-疾患特性に応じた自己管理が獲得できた事例-
永井 謙次西田 宗幹
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抄録

【はじめに】

近年、医療費の適正化により急性期病院から早期に在宅復帰するケースが増加傾向にある。中でも心不全は再入院率が高く、増悪要因に対する教育的支援が重要である。今回、退院直後の心疾患術後の利用者に対して短期的に訪問リハが介入し、自己管理の獲得をはじめとする自立支援に繋がった事例を経験した為、報告する。

【方法】

対象は、80歳代男性。要介護2。今回、大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術、狭心症に対して冠動脈バイパス術を施行。合併症に慢性心不全、発作性心房細動、併存疾患は末期腎不全で週3回血液透析を実施。術後約3週時点での心臓超音波検査はLVEF47%、E/e'20.07、退院前日の血液検査はeGFR12.7、Hb8.0、Alb2.9。訪問リハ開始前に退院前カンファレンスへ参加し、心臓超音波検査や血液検査などの情報収集を行った。退院後の目標設定は「リハビリ特化型デイサービスの再開に向けた体力向上」とし、利用者、多職種間で共有した。術後約5週で自宅退院となった。

退院後約1週より週1回の頻度で訪問リハを開始し、安静時脈拍数104bpm、SpO₂97%、両下肢に軽度の浮腫を認めた。MMSEは30点。両下肢筋力はMMT3+~4と低下し、軽度の膝関節伸展制限、円背、側弯を認めた。バランス能力は2ステップ値0.63と低下。ADLは自宅内四点杖つたい歩き自立で連続10m可能(行動範囲は7m以内)、屋外歩行は未実施、入浴見守り、その他セルフケア自立。

心不全や腎不全に配慮し、①アップルウォッチの脈拍数が110bpmとなればアラームが鳴るように設定し、休息を取る事、②静脈還流量に配慮した運動姿勢で自主練習を行う事を指導し、自己管理を促した。

【結果】

退院後約2週では自主練習やアップルウォッチのアラームが鳴れば休息を取る生活が定着に至った。退院後約3週では、自主練習のセット数を増加できていた事から、体力が向上していると判断し、送迎車乗降場までの移動を確認した。その結果、術前より安楽に行えた事から、リハビリ特化型デイサービスを利用する自信が向上。サービス担当者会議を通してデイサービススタッフへ介助方法を伝達し、退院後約6週で訪問リハ終了となった。最終評価時では、Alb3.4と栄養状態が改善。MMT4~4+、2ステップ値0.80となり、筋力・バランス能力が向上。T字杖つたい歩きは自立となり、連続約20m可能となった。

【結論】

本事例は、健康管理意識や最新機器への興味関心が高かった。訪問リハではこれらの強みを活かした休息の判断方法や疾患特性に応じた自主練習の設定を指導した。結果、継続性、妥当性を持った自己管理方法の定着に繋がり、心不全悪化無く、目標達成する事ができたと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言の理念に基づき、対象者に発表の趣旨や個人を特定できないよう配慮することを口頭・紙面にて十分に説明し、自己決定を尊重した上で同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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