理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-007
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口述発表
訪問リハビリテーションによる生活空間拡大の効果とプログラムについて
藤堂 恵美子樋口 由美北川 智美安藤 卓村上 達典田村 哲也畑中 良太上月 渉永井 麻衣
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抄録

【はじめに・目的】

訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)では、生活空間が狭小化した利用者に対し、心身機能のみならず活動・参加の改善を図り、生活空間拡大を目標とすることが多い。しかし、訪問リハによる生活空間拡大の効果について検証した研究は少ないのが現状である。そこで本研究は、生活空間が狭小化した高齢者を対象に、訪問リハによる生活空間拡大の効果および訪問リハのプログラムについて明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は、平成26年4月~平成28年3月にA訪問看護ステーションの介護保険による訪問リハを開始し、3か月間追跡可能であった30名(平均年齢82.4±7.5歳、女性24名)とした。全介助の者、研究の主旨を理解できない者は除外した。調査項目は基本属性および生活空間(LSA)と、生活機能として身体機能(立ち座り動作)、精神機能(GDS5、FES:転倒自己効力感)、ADL(FIM)を調査した。訪問リハプログラムは身体機能、活動、環境への介入の3項目に分類した表を作成し、担当理学・作業療法士が最も重点的に行った項目を毎回の訪問後に記入した。追跡後、1か月間で各項目が選択された回数を訪問回数で除し、割合を算出した。統計解析は、群間比較にはχ2検定またはMann–Whitney U検定、群内比較にはχ2検定またはWilcoxonの符号付順位検定、プログラムの群内比較にはFriedman検定を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】

主疾患は運動器疾患19名、脳血管疾患6名、その他5名であった。入院歴がある者は15名であった。ベースラインのLSAから、人的・物的介助に関わらず最大生活空間がレベル1~2であった15名を屋内群、レベル3~4であった15名を屋外群とした。レベル5の者はいなかった。ベースラインの群間比較では、転倒歴がある者、立ち上がりに上肢の支持を要する者は屋内群で有意に多く、LSAおよびFESは屋外群が有意に高かった。基本属性、FIM、GDS5に有意差はなかった。ベースラインと3か月後の中央値比較では、屋内群はLSA(6→24)、FIM(102→104)、FES(20→24)が有意な改善を認めた。屋外群ではLSA(22.5→36)、FIM(110→118)が有意に改善し、FES(26→29)も改善傾向であった。訪問リハプログラムは、屋内群では3か月間大きな変化はなく、活動への介入約60%、環境への介入約40%であった。屋外群では1か月目が活動56%、環境44%、2か月目が活動78%、環境22%、3か月目が活動91%、環境8%と、活動への介入が有意に増加した。

【結論】

3か月間の訪問リハにより、生活空間、ADL、転倒自己効力感への効果が認められた。プログラムに関しては、生活空間が狭い者には3か月間環境への介入頻度が高かった。生活空間が広い者に対しては、環境への介入から活動への介入に移行していた。利用者の状態に応じたプログラムを実施することで、生活空間、ADL、転倒自己効力感の改善に繋がることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科の研究倫理委員会の承認(2013-102)を得て実施した。全対象者には説明を行い、同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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