理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-009
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口述発表
訪問リハビリテーション利用者における生活機能と身体活動量の関連性
-多施設共同データを用いた後方視的研究-
尾川 達也石垣 智也中原 彩希喜多 頼広宮下 敏紀岸田 和也松本 大輔
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抄録

【はじめに,目的】 訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では,直接的介入による心身機能の改善のみならず,背景因子を考慮した上で活動や参加を包括した身体活動量の増進,管理を行い,生活機能の維持・向上を図ることも重要となる.しかし,これらの介入戦略は経験的,慣習的に実践していることが多く,訪問リハ利用者の生活機能に対する身体活動量の役割については未だ明らかではない.そこで本研究では,多施設共同データを用いた後方視的研究にて,訪問リハ利用者における生活機能と身体活動量の関連性について調査することを目的とした.

【方法】対象は2015年11月から2018 年5月の間に,研究協力7施設にて訪問リハを受け,利用期間中に身体活動量を測定した71名(男性30名,女性41名,年齢75.9歳)とした.除外基準は,屋内歩行が非自立の者,居住環境が施設の者,調査項目に欠損のある者とした.調査項目は,身体活動量を測定した時点の情報とし,基本属性として年齢,性別,診断名,慢性疾患数,要介護度,訪問リハ日数,通所の有無,生活機能としてFunctional Independence Measure(以下,FIM)の運動項目とFrenchay Activities Index(以下,FAI)を使用した.身体活動量の測定には,活動量計(Active style Pro HJA-750C, オムロンヘルスケア社)を用い,起床から就寝まで6日間測定した. 分析方法は,座位行動(Sedentary Behavior;以下,SB)を1.5 METs以下,低強度活動(Light Physical Activity;以下,LPA)を1.6‐2.9 METs,中高強度活動(Moderate to Vigorous Physical Activity;以下,MVPA)を3.0 METs以上と定義し,1日の強度別の活動時間を算出した.統計解析は,生活機能と基本属性や身体活動量との関係を明らかにするためにSpearmanの順位相関係数を求めた.また,生活機能に影響する要因を検討するためFIMとFAIを目的変数とし,これらと有意な相関関係のあった項目を説明変数に投入した重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.

【結果】身体活動量の平均値と装着時間に占める割合は,SBが512±132分(65%),LPAが266±114分(34%),MVPAが11±18分(1%)であった.生活機能と身体活動量の関連性について,FIMでは要介護度,SB,LPAと有意に相関し,重回帰分析の結果,要介護度(β=-0.34)とSB(β=-0.36)が抽出された(R2=0.28,p<0.01).一方,FAIでは性別,要介護度,通所の有無,SB,LPA,MVPAと有意に相関し,重回帰分析の結果,男性(β=-0.31)と要介護度(β=-0.29),LPA(β=0.34)が抽出された(R2=0.44,p<0.01).

【結論】本調査の結果,訪問リハ利用者の生活機能には,介護の必要性を表す要介護度だけでなく,身体活動量も関連することが明らかとなった.特に,FIMではSB,FAIではLPAと,疾病等により一般に推奨されているMVPAが実施困難となる訪問リハ利用者では,座位行動の削減,もしくはより低強度の活動が生活機能に影響する可能性が示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は西大和リハビリテーション病院の研究倫理委員会の承認を得て行い,カルテ診療録を用いた後方視的研究として実施した.研究協力施設からは,匿名化されたデータ提供のみとし,事前に施設長からの承認を得た.また,対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,研究の内容,利益と不利益,同意の撤回,個人情報の保護等の説明を行い,同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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