理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-010
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口述発表
当院の訪問リハビリ利用者における早期終了者の傾向
高橋 友樹末永 達也福岡 宏之澤 広太内藤 進太郎三橋 陽平
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抄録

【はじめに・目的】

介護報酬より退院・退所後3ヶ月以内の訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)に対して短期集中リハビリ実施加算が定められており,早期に訪問リハを行うことが重要視されている.また,訪問リハが長期化することで,新規利用者の介入が困難となる,介護保険給付費が増加する等の問題があり,早期終了も必要だと言われている。訪問リハの介入は,目標が達成すれば終了して,他サービスに移行するか,または地域社会に参画していくべきだと考える.そこで今回,当院における早期終了者と長期利用者の傾向を知り,適切な終了方法を検討する.

【方法】

平成28年4月から平成30年3月までに当院の訪問リハを開始した利用者51名の中で,訪問リハを3ヶ月以内に終了した利用者18名(以下早期群)と3ヶ月以上の利用者28名(以下長期群)を対象とした.訪問リハ開始3ヶ月以内に入院・ご逝去した利用者は除外した.評価項目は, 年齢,性別,世帯構成,介護者の有無,要介護度,疾患,住宅の所有形態,通所サービス利用の有無,開始時と3ヶ月後の日常生活自立度(Barthel Index:以下BI),移動自立度(歩行自立,車いす自立,歩行介助,車いす介助),外出頻度, 訪問リハ介入期間,訪問リハ利用頻度,訪問リハ開始時の目標(屋外ADL,屋内ADL),紹介元(当院退院,外部依頼),認知症の有無,高次脳機能障害有無を情報収集した.統計処理はx²検定及び,マンホイットニーのU検定を行い,有意差を認めた項目に対してロジスティック回帰分析のステップワイズ法を用いて統計処理を行い,有意水準は5%とした.

【結果】

2群間(早期群/長期群)の比較では,年齢(73.1±12.0/81.1±8.6),開始時BI(85.3±15.1/61.3±29.9),3ヶ月後BI(89.4±10.8/65.2±28.9) ,外出頻度(1.7±0.7/0.4±0.7),移動自立度,開始時の目標,疾患,通所サービス利用の有無において有意差が認められた. 訪問リハ介入期間を従属変数とし,有意差の認められた調査項目をロジスティック回帰分析した結果, 開始時の目標(オッズ比15.82,95%信頼区間=1.19-2.11,p=0.03),年齢(オッズ比0.85,95%信頼区間=0.76-0.95,p=0.003)が早期群と有意に関連した.

【結論】

本研究では,早期に訪問リハが終了する利用者は,年齢が若く開始時の目標を屋外ADLとすることが出来る利用者だということが示唆された.屋外に行き地域社会と関わりを持つことで,目標達成の時期が早まり,次のステップへ繋がっていくと考えられる.一方,開始時のBIが高い利用者の中には,訪問リハ終了までの期間が長くなる場合があることも伺えた. これは目標が屋外歩行自立レベルや旅行等となり、目標達成までに3ヶ月以上かかってしまうことが考えられる.利用開始時に掲げる目標をさらに具体化し,目標達成後に訪問リハが終了しても利用者自身でそのADLを維持・向上出来るように,訪問リハ開始時から外出支援まで含めた社会的資源の調整を含めて介入を進めていくことが必要だと考えられる.

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者にはヘルシンキ宣言に基づき本研究に関する説明を行い,紙面上にて同意を得て実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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