主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
当院では2017年度より急性期病棟で休日にリハビリテーション(以下リハ)を実施している.現在,急性期病院で休日にリハを行っている施設の報告は少なく,その効果も明らかではない.そこで,本研究の目的として,急性期シームレスリハが人工膝関節置換術(以下TKA)患者の歩行機能に与える効果を検討することとする.
【方法】
2016年3月から2018年5月の期間に当院で初回TKA手術を施行した患者79例を対象とした.除外基準は,認知機能障害・膝関節以外の著明な機能障害を有するものとした.対象者を平日のみリハを行った従来群40名(年齢76.3±7.1歳,男性4名,女性36名)と休日もリハを行ったシームレス群39名(年齢76.6±8.3歳,男性13名,女性26名)の2群に分けた.2群における治療内容に差はなかった.
評価項目は,基本属性として年齢,性別,BMI,術前独歩自立の可否,術後在院日数,リハ実施日数,平均リハ単位数,屋内独歩自立日数をカルテより後方視的に収集した.身体機能評価として膝関節可動域角度(以下ROM)、Timed up and go test(以下TUG)を術前および術後1週,退院時に計測した.
統計解析は,各評価項目をMann-WhitneyのU検定およびχ2検定を用いて2群間で比較した.また屋内独歩自立日数を目的変数,基本属性,シームレスリハの有無と術後1週ROM・術後1週TUGを説明変数として投入した重回帰分析を用いて要因分析を行った.有意水準は5%未満とした.
【結果】
術前の基本属性・身体機能評価において2群間で有意差は認めなかった.群間比較では,シームレス群でリハ実施日数が有意に多く(p<0.01),屋内独歩自立日数が有意に短縮(p<0.05),退院時ROM屈曲は小さい(p<0.05)結果となった.独歩自立日数を目的変数とした重回帰分析の結果,シームレスリハを行うことで負の作用(β=-0.43),術前独歩可能で負の作用(β=-0.27),術後1週目TUG(β=0.34)が選択された.(修正R2:0.39)
【結論(考察も含む)】
本研究の結果,急性期シームレスリハは従来群と比較して,より多くのリハを提供することができ,屋内独歩自立の獲得が早いことが示された.屋内独歩自立には,先行研究より,術前の身体機能やTUGが指標になると報告されており,本研究でも同様の結果となった.また本研究ではそれに加えて急性期シームレスリハを行うことが,屋内独歩自立の早期獲得に影響を与えることが示唆された.これは,急性期でもシームレスリハを行うことで,毎日の状態変化を鋭敏に捉えることができ,休日でも安静度の調整が可能となったためと考える.本研究の結果より,急性期シームレスリハは在院日数短縮化に則した運用であることが示唆された.また今後の課題・展望として急性期シームレスリハを行うことによる入院中の活動量の変化や退院後の身体機能の経時変化を調査する必要があると考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者に対して本研究における評価の必要性を十分に説明し同意を得たうえで,ヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し,使用データは匿名化処理をした後に解析しているため研究倫理上の問題はない.