理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-20-1
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一般演題
変形性膝関節症症例における片脚立位動作時の姿勢制御の特徴
佐橋 健人千葉 健石田 知也山中 正紀堀 弘明由利 真遠山 晴一
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抄録

【はじめに、目的】

変形性膝関節症(膝OA)症例は転倒リスクが高く、転倒予防には姿勢制御の理解が重要と考えられている。近年、両脚立位から片脚立位に移行する際の姿勢制御について加齢や疾患の影響が報告され注目されている。膝OA症例では片脚立位を一定時間保持できない例も少なくなく、移行動作に着目した姿勢制御分析は有用と考えられるが、膝OA症例に関する報告は渉猟できなかった。そこで、本研究の目的は膝OA症例における両脚立位からの片脚立位動作時の姿勢制御の特徴を検討することとした。

【方法】

対象は膝OA症例10名(67.8±8.9歳、153.8±7.5cm、56.7±15.1kg)、健常高齢者9名(61.0±9.0歳、157.0±9.3cm、57.3±11.2kg)とした。動作課題は両脚立位からの片脚立位動作とした。三次元動作解析装置と床反力計を用いて計測し、足圧中心(COP)と身体質量中心(COM)を算出した。両脚立位からの片脚立位動作は先行研究に準じて左右方向のCOPとCOMを用い、加速相・減速相・保持相に区分した(Mani et al., 2015)。加速相はCOMを立脚側へ加速させる相で、COPが遊脚側方向へ移動開始した時点から、再び立脚側方向へ移動しCOMを追い越した時点までと定義した。減速相はCOMを減速させる相で、COPがCOMを追い越した時点から、COMの立脚側方向への移動が終了した時点までと定義した。保持相はCOMを立脚側で保持する相で、減速相が終了した時点から2秒間と定義した。加速相・減速相・保持相における左右方向のCOP-COM間距離の二乗平均平方根(RMS)を算出した。片脚立位動作は左右方向の姿勢制御課題であり、本研究では左右方向のみを解析した。統計学的検討には対応のないt検定を用い、各相における両群の比較を行った。また、Pearsonの積率相関係数を用い、膝OAにおける各相の相関を検討した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

膝OA症例は健常高齢者と比較し、片脚立位動作時の減速相と保持相において、COP-COM間距離のRMSが有意に増大していた(P = 0.03、P < 0.01)。一方、加速相には両群間に有意差を検出できなかった。膝OA症例においてCOP-COM間距離のRMSの加速相と減速相(R = 0.74、P = 0.02)、減速相と保持相の間に有意な相関を認めた(R = 0.84、P < 0.01)。

【結論(考察も含む)】

COP-COM間距離のRMSの増大は一般的に姿勢不安定性を示すとされている。本研究結果より膝OA症例は健常高齢者と比較し、片脚立位動作時の減速相・保持相に姿勢不安定性を有していると考えられた。さらに、膝OA症例の各相の姿勢安定性には関連が認められ、保持相だけでなく加速相や減速相にも着目して評価、介入する必要があると思われた。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の目的、手順、考えられる危険性などを説明し十分に理解を得た上で参加に同意する者は同意書に署名し本研究に参加した。なお、本研究は北海道大学大学院保健科学研究院の倫理委員会の承認を得て実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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