理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-24-2
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一般演題
Drop vertical jumpにおける身体重心位置と運動学・運動力学パラメータの関連
横山 寛子尾田 敦牧野 美里石川 大瑛鹿内 和也塚本 利昭津田 英一
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抄録

【はじめに、目的】

 膝前十字靭帯(ACL)損傷は着地動作やストップ動作に多いといわれ、先行研究では受傷時のinitial contact(IC)において身体重心(COG)が足圧中心(COP)に対し大きく後方に位置していたと報告されている。Drop vertical jump(DVJ)はACL損傷のリスクのスクリーニング評価として広く用いられており、床反力や外的膝関節モーメントと下肢関節角度との関連についての報告は多くみられる。しかしながら、COPからCOGまでの前後距離(COP-COG間距離)と運動学・運動力学パラメータとの関連について検討した報告は見当たらない。本研究の目的はDVJの着地動作におけるCOP-COG間距離と運動学・運動力学的パラメータとの関連について検討することとした。

【方法】

対象は健常女子大学生20名とした。動作課題は高さ30cm台から着地した後にできる限り速く垂直跳びをするDVJとした。動作解析には赤外線カメラ8台で構成される三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社製、Vicon Nexus)および床反力計1枚(AMTI社製)を使用し、サンプリング周波数はそれぞれ200Hz、2000Hzとした。マーカーセットはPlug-in Gait Full Bodyモデルに従い、身体の35か所に赤外線マーカーを貼付した。測定項目は床反力垂直成分のピーク値(peak vGRF)、床反力後方成分のピーク値(peak pGRF)、peak vGRF発生時の外的膝関節屈曲及び外反モーメント、IC及びpeak vGRF発生時における矢状面・前額面での下肢関節角度、IC及びpeak vGRF発生時のCOP-COG間距離とした。解析対象はすべて非利き脚とした。ICでのCOP-COG間距離と他の測定項目との関連について、Pearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。

【結果】

IC時においてCOPに対しCOGはすべて後方に位置(131.6±5.9mm)していた。peak vGRF発生時ではCOPに対するCOGは14名が後方に、6名が前方に位置していた。ICでのCOP-COG間距離とpeak vGRF発生時でのCOP-COG間距離(r=0.681)、外的膝関節屈曲モーメント(r=0.505)との間に有意な正の相関が認められた。他の項目については有意な相関は認められなかった。

【結論(考察も含む)】

先行研究ではACL損傷はおよそpeak vGRF発生時に引き起こると報告されており、また着地動作におけるCOG後方位や外的膝関節屈曲モーメントの増大は大腿四頭筋の過活動を引き起こし、ACL損傷のリスクとなる可能性があると報告されている。本研究の結果より、IC時点でのCOP-COG間距離と、peak vGRF発生時のCOP-COG間距離、外的膝関節屈曲モーメントは関連があることが明らかになり、DVJにおけるICでのCOP-COG間距離をみることで、ACL損傷のリスク評価の一助になる可能性があることが分かった。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認(整理番号:2017-023)を得て実施した。また対象者に対して本研究の目的,方法について予め十分に説明し同意を得て実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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