理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-P-D-1-3
会議情報

ポスター演題
大学アメリカンフットボール選手における腰痛発症と高速域体幹筋力との関係
浅田 秀樹大久保 吏司内田 智也堀 喜与美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】

アメリカンフットボールはコンタクトスポーツであり、タックルやブロックなど瞬間的なパワー発揮や間歇的筋持久力が必要となる。そのため体幹強化は腰痛発症などを防ぐために重要となる。また様々な収縮様式で体幹筋力を評価する必要があると考えられる。しかしながら、アメリカンフットボール選手における腰痛の有無と体幹の筋力特性についての報告は少ない。本研究の目的は、アメリカンフットボール選手の等速性体幹筋力を測定し、角速度の違いによる特徴を明らかにすること、および腰痛の有無を調査し、腰痛との関連性について検討することとした。

【方法】

対象は2016年から2018年の間、某大学アメリカンフットボール部に所属した男子学生75名とした。

方法は、まず問診によりシーズン中の腰痛発生の有無について調査し、2群に分けた。また体幹筋力の測定にはBIODEX SYSTEM3を用い、角速度30、60、120deg/secの3種類の等速性屈伸筋力を測定した。測定肢位はマニュアルに従い半座位とし、屈曲30°から伸展20°の運動範囲にて各5回の反復運動を行ってもらい、ピークトルク値を体重で除した体重比(以下%BW)を体幹筋力の代表パラメーターとした。さらに伸筋に対する屈筋の比(以下F/E比)も算出した。

腰痛群と非腰痛群の2群間において、各角速度での体幹筋力について対応のないt検定を用いて比較検討した。また角速度の違いについて反復測定分散分析を用いて検討した。

【結果】

対象者のうち重複している選手を除いたところ、腰痛群11名、非腰痛群25名であった。体幹筋力測定の結果として、角速度の違いによる変化については、伸展%BWは角速度の増加にともない減少したが、屈曲%BWについては有意差を認めなかった。

次に腰痛群と非腰痛群との比較においては、屈曲%BW、伸展%BWとも全ての角速度において両群間での有意差は認めなかったが、F/E比については、120deg/secにおいて腰痛群78.3±18.4(%)、非腰痛群94.8±34.8(%)と腰痛群の方が有意に小さい値を示した(p=0.046)。

【結論】

本研究の結果より、体幹屈曲および伸展筋力と腰痛の有無との関連性はみられなかった。しかしながらF/E比に有意差を認めたことから、屈筋と伸筋のアンバランスが腰痛に関与しているのではないかと示唆された。下肢においては、膝伸展筋力と屈曲筋力のアンバランスがハムストリングスの肉離れやACL損傷の受傷原因の一つとして挙げられている。体幹においても、屈曲筋力や伸展筋力だけでなく、そのバランスが重要であると考えられた。

さらに低速域ではなく、高速域でのF/E比が腰痛に関連していたことから、筋力発揮の速度特性に着目することも重要であると示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は神戸学院大学倫理委員会の承認を得て行った(承認番号HEB17-17)。また、ヘルシンキ宣言の趣旨に則り、対象者には本研究の趣旨や内容及び倫理的配慮について説明し、書面にて同意を得た上で実施した。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top