理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-P-B-3-3
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ポスター演題
Keele STarT Backスクリーニングツールで階層化した腰痛症の各群におけるマッケンジー法の成績の検討
柘植 孝浩戸田 巌雄
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抄録

【はじめに、目的】

 腰痛症を予後規定因子に基づいて分類する方法として、Keele STarT Backスクリーニングツール(SBST)があり、理学療法はmedium risk群からの介入が推奨されているが、理学療法の詳細な方法についてはまだ明らかになっていない。本研究の目的はSBSTを用いて分類し、各群における当院で行ったマッケンジー法(MDT)の成績の有効性を検討し、medium・high risk群における理学療法としてMDTが良い方法となるか検討することである。

 

【方法】

 対象は2015年7月から2017年3月に当院にて腰痛症に対しMDTを用いて治療を行ない、初回・最終評価が可能であった43例(男性15例、女性28例)である。対象群をMDT初回時にSBSTで評価し、low risk群(L群)20例、medium risk群(M群)18例、high risk群(H群)5例に分類した。MDTの初回および最終時に日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)を評価し、各群を比較検討した。三群比較ではKruskal-Wallis検定、多重比較ではSteel-Dwass法、治療前後の比較ではStudentのt検定、Mann-WhitneyのU検定、Wilcoxonの符号順位検定を用いて、有意水準を5%未満とした。

 

【結果】

 治療前のJOABPEQでは疼痛関連障害、心理的障害でM群がL群より有意に低い値を示し(P<0.01)、歩行機能障害ではM群、H群がL群より有意に低い値を示した(P<0.01)。

 治療前後のJOABPEQの比較ではL群、M群では全項目において有意に改善が見られた(P<0.01)。H群では歩行機能障害、社会生活障害において有意に改善が見られていた(P<0.05)。

 有効率ではL群、M群、H群それぞれ、疼痛関連障害では61%、88%、75%、腰椎機能障害では63%、65%、50%、歩行機能障害では71%、80%、100%、社会生活障害では56%、65%、0%、心理的障害では15%、28%、20%であった。

 適切な運動方向(Directional Preference、DP)についてはL群では伸展16例(80%)、屈曲2例(10%)、不明2例(10%)、M群では伸展9例(50%)、屈曲6例(33%)、側方1例(6%)、不明2例(11%)、H群では伸展3例(60%)、屈曲1例(20%)、不明1例(20%)であった。

 

【結論】

 本研究ではM群においてJOABPEQで有意な改善が見られ、症例数は少ないが、H群においても改善が見られていた。SBSTではM群、H群において理学療法の介入が推奨され、H群においては理学療法に加えて認知行動療法が推奨されている。心理社会的因子の関与により遷延化のリスクが高いM群、H群においてもDPは見られており、このDPに基づく運動療法と患者教育が有効であったと思われる。また、MDTにおける患者教育では認知行動療法の要素を含んだアプローチが含まれているため、M群のみだけではなく、H群においても対応できたと考える。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は一般財団法人倉敷成人病センター倫理委員会の承認を得て実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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