理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-O-17-1
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一般演題
肩関節内転動作における棘上筋の筋厚の変化について(第2報)
-超音波画像診断装置を用いた検討-
前田 亮田中 康明一瀬 加奈子樋口 隆志小森 峻衛藤 正雄
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抄録

【はじめに、目的】

肩関節の安定化メカニズムとして、腱板筋群が重要な役割を担っているとされている。特に棘上筋(以下;SSP)の持つ役割は重要であり、多くのトレーニング方法が報告されている。その中で、筋電図を用いて肩関節内転でSSPの筋活動が見られたという報告があり、前回の本学会において我々は実際に腱板筋群がどのように活動しているか超音波画像診断装置を用いて検討を行った。その結果、運動時の筋厚は有意に増加していたが、臨床的に意味を持つ変化ではなかった。そこで本研究の目的として前回よりも運動時の負荷量を増加させた時の筋厚の変化を調査することとした。

【方法】

対象は肩関節に既往のない健常男性27名、54肩(平均年齢28.7±8.3歳)とした。測定姿勢は椅子座位、股関節・膝関節90°屈曲位で、肩関節は30°外転位とし、SSPの測定部位は肩甲棘上(肩峰角から肩甲骨上角までの直線距離)の50%部位にマジックにてマーカーをつけ、超音波画像診断装置(SonoSite S-Nerve)を用いて、筋の長軸に対して垂直にプローブを当て、縦画像を記録した。その後、画像解析ソフトImage Jを用いて、僧帽筋との境界にある筋膜から肩甲骨までの最大距離を筋厚とした。運動負荷は予め肩関節外転30°位でその肢位を保持し外転方向への抵抗を加え、最大等尺性収縮を計測し、その値の20%を負荷量として設定した。そしてSSPの安静時及び収縮時の筋厚を測定し、Image Jを用いた計測を2名の検者によって行った。測定法の信頼性について、相対信頼性は検者内・検者間の級内相関係数(ICC(1.1)、ICC(2.1))を用いて検討し、絶対信頼性はBland Altman分析を用い、系統誤差の確認と測定値の標準誤差(SEM)、最小可検変化量(MDC95)を算出し、偶然誤差の検討を行った。また、肩関節内転時の腱板筋群の活動としてSSPの安静時と収縮時の筋厚の変化についてWilcoxonの符号順位和検定を用いて検討を行った。有意水準はすべて5%未満とした。

【結果】

今回用いた計測方法ではICC(1,1)、ICC(2,1)ともに0.9以上であり、Bland Altman分析では同一検査者におけるSEMは0.37mm、MDC95は1mmであった。系統誤差は各項目に認められなかった。SSPの安静時(19±0.2㎜)と収縮時(19.3±0.2㎜)の筋厚については収縮時において有意に増大が見られたが(p<0.05)、MDC95以下の変化であった。

【結論(考察も含む)】

前回検討を行った最大筋力の10%の負荷量と同様に、20%の負荷においても肩関節内転時にSSPの筋厚に変化が見られたが、MDC95以下の変化であり、筋厚の変化は臨床的な意味を持つものではない可能性が考えられる。今後は肩関節内転運動による肩関節の運動性や変化等についても検討を行う必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、個人情報の保護について口頭で説明を行い、参加を持って同意得られたものとした。

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© 2019 日本理学療法士協会
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