理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-O-17-2
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一般演題
リバース型人工肩関節全置換術後症例の肩関節機能について<第2報>
尾崎 尚代前田 卓哉千葉 慎一田村 将希西中 直也
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抄録

【はじめに】

 リバース型人工肩関節全置換術(以下、rTSA)の先進国である欧米では、rTSAの問題と合併症に関する報告で様々な症状が挙げられている。なかでもscapular notch(以下、notch)は合併症の50%を占め(Zumsteinら、2011)、notchの進行は再手術の要因になり得る。また、日本では再手術は5%に至り、原因の約1/3は可動域制限である。我々は第1報にてnotchの発生は過剰な肩甲骨の上方回旋が関与していることを報告した。今回、rTSA後の肩関節機能について調査した結果、興味ある知見が得られたので報告する。

【方法】

 対象は、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院にてrTSAを施行し、術後1年以上観察が可能であった53例54肩(男性17例、女性36例、平均年齢75歳、観察期間1年1か月~4年)である。

 術前と術後1年時の肩甲骨面上45度挙上位像(以下、S45像)を用いて肩甲骨上方回旋角度(Scapula Index、以下、SI)を調査した。また、術後1年時の肩関節屈曲と外旋の角度を診療録から調査した。

 notchの有無は、術直後からの経時的なS45像によって医師が発生時期を判断し、対象をnotchあり群(以下、あり群)・notchなし群(以下、なし群)に分類した。

 術後1年時の外旋と屈曲の関係、および術前と術後1年時のSIと外旋の関係について2群間で比較した。統計学的処理はSpearman's rank correlation coefficientおよびχ2 testを用いて危険率5%にて行った。

【結果】

 54肩中、notchが発生したのは13肩(24.1%、男性5肩、女性8肩)であり、そのうち8名(61.5%)が術後1年以内に発生していた。

 術前のSI平均値はあり群 23.8 度・なし群23.1度、外旋平均値はあり群 23.8 度・なし群19.9度、術後1年時の屈曲平均値はあり群 114.6 度・なし群117.8度、SI平均値はあり群14.6 度・なし群13.0度、外旋平均値はあり群 23.8 度・なし群19.9度だった。

 術後1年時の外旋と屈曲の関係は、なし群で外旋が大きいほど屈曲も大きくなった(p=0.005)。全症例のSIの平均値を基準とした時のSIと外旋の関係は、術前のSIが大きく外旋が大きいとnotchが発生した(p=0.006)。

【結論】

 rTSA術後のnotch発生率は44%~96%と諸家は報告している。今回の調査における発生率は22.2%と低かったが、術後1年未満での発生は約60%と比較的早期に発生していた。

 今回の結果から、rTSA術後の外旋角度と屈曲可動域が関与することが示唆された。また、術前のSIが大きく外旋が大きいとnotch 発生の危険性があることが示唆された。これらのことから、rTSA症例の術前SIと外旋角度を調査することでnotch発生や可動域制限残存の危険性を予測することが可能と考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

当院整形外科受診時に医師が患者の同意を得て撮影されたレントゲン像を用いた。なお、個人情報は各種法令に基づいた当院規定に準ずるものとし、当院倫理委員会の承認を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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