理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-O-17-3
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一般演題
RSA後のscapular notch発生要因の検討
前田 卓哉尾崎 尚代千葉 慎一田村 将希鈴木 昌西中 直也
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抄録

【はじめに、目的】

リバース型人工肩関節置換術(RSA)が本邦に導入されてから4年以上経過している現在,徐々に術後成績の報告がなされている.RSAの合併症の1つであるScapular notching(SN)の発生時期や原因に関しては,先行導入している諸外国でも様々な報告があるが一貫性はない.当院ではglenosphereの設置方法など手術の段階からSNの発生を予防するための介入をしているが,機能的な問題も存在すると考えている.本研究の目的は,SNを発生した症例とSNを発生していない症例の機能的な特徴を検討することである。

【方法】

対象は,昭和大学藤が丘リハビリテーション病院にてRSAを施行し,術後1年以上経過観察可能であった54名56肩(男性16名,女性38名,年齢:74.6±7.2歳,観察期間:1年~4年2か月)である.対象をSN発生群とSN非発生群の2群に分け,術前,術後6か月,術後1年それぞれの肩節関節自動可動域(屈曲・外転・外旋),レントゲン像から肩甲骨機能(Scapula index)を求め,それぞれの項目を2群間で比較検討した.Scapula indexはScapula-45撮影法による肩甲骨上方回旋角度を下垂位(SI下垂位)と肩甲骨面上45°挙上位(SI45)で測定した.また,SI45からSI下垂位を引いた値をscapulothoracic index(STI)とした.統計学的処理はWilcoxonの符号順位検定を用いて危険率5%にて行った.

【結果】

SN発生群は14名14肩(男性5名,女性9名,年齢75.5±6.5歳),SN非発症群は40名42肩(男性11名,女性29名,年齢74.5±7.5歳)であった.SNの発生率は25.0%,手術から発生までの日数は384.9±260.3日であった.術後1年の下垂位SIはSN発生群1.1±8.5°,SN非発生群-8.5±13.1°であり,SN発生群はSN非発生群に対して有意に大きかった(p=0.02).術後1年のSI45も同様にSN発生群22.3±12.7°,SN非発生群10.5±15.4°でありSN発生群が有意に大きかった(p=0.02).他の項目は有意差を認めなかった.

【結論】

SNは肩甲骨側のglenosphere下端と上腕骨側インプラントのインピンジメントにより生じると考えられている.インピンジメントが生じるには,肩甲骨が上方回旋することで上腕骨側のインプラント接触する必要がある.今回の結果から,SN発生群はSN非発生群に対して術後1年までのADL動作において肩甲骨を過剰に上方回旋させている傾向があると考えられる.また,術後1年のSI下垂位でSN発生群はSN非発生群に対して肩甲骨が上方回旋をしている状態で,いわゆる肩をすくめた姿勢をとっていることとなり,動作時だけでなく安静時に肩甲骨が上方回旋していることもSNの発生リスクになると考えられる。以上のことから,安静立位姿勢での肩甲骨アライメントにも変化を与えることでSN発生リスクを軽減ですることが可能と考えた.

【倫理的配慮,説明と同意】

昭和大学藤が丘リハビリテーション病院整形外科受診時に医師が患者の同意を得て撮影されたレントゲン像を用いた.なお,個人情報は各種法令に基づいた当院規定に準ずるものとし,当院倫理委員会の了承を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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