理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-M-1-3
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ミニオーラル
肩甲上腕関節における上腕骨頭の位置と肩甲骨アライメントおよび肩関節可動域との関連性
-超音波画像診断装置を用いた検討-
田中 康明一瀬 加奈子前田 亮樋口 隆志小森 峻衛藤 正雄
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抄録

【はじめに、目的】肩甲上腕関節において、上腕骨頭の上方変位は腱板断裂、前方変位はインピンジメント症候群との関連性が報告されており、その原因の一つとして肩甲骨のアライメントや肩関節の可動域との関連が示唆されている。しかし、上腕骨頭の変位の評価は単純X線やCT、MRIを用いたものが多く、理学療法士がリアルタイムに上腕骨頭の変位を確認できる、超音波画像診断装置を用いた報告は少ない。そこで本研究の目的として、上腕骨頭の変位ついて、肩峰骨頭間距離(AHD)と前後方向の変位(APD)を超音波画像診断装置を用いて評価し、肩甲骨アライメントおよび肩関節可動域との関連性について検討することとした。

【方法】被験者は肩関節に愁訴や既往のない健常男性20名、40肩(平均年齢30.7±8.2歳)とした。測定姿勢は椅子座位,股関節・膝関節90°屈曲位で、両上肢は体側に自然に下垂させ、肩関節は内外旋中間位とした。測定部位は肩関節側面および前面とし、超音波画像診断装置(SonoSite S-Nerve)にて画像を記録し、画像解析ソフトImage Jを用いて、画像上の上腕骨頭の最上部から肩峰までの最短距離をAHD、烏口突起の最前面に引いた接線から上腕骨頭最前面に引いた接線間の距離をAPDとして、各距離を計測した。肩甲骨アライメントは、テープメジャーおよびデジタル傾斜計を使用し、肩甲棘内側縁と同じ高さの棘突起との距離を肩甲骨脊柱間距離、肩甲骨面での肩峰と肩甲棘三角を結んだ線と水平線とのなす角を肩甲骨上方回旋角度、矢状面での肩甲骨内側縁の傾斜と鉛直線のなす角を肩甲骨前傾角度として測定した。肩関節可動域に関しては、屈曲、外転、2nd外旋・内旋、水平内転角度を傾斜計を用いて測定した。AHD・APDと肩甲骨アライメントおよび肩関節可動域の関連性についてはSpearmanの相関係数を用いて検討を行った。有意水準はすべて5%未満とした。

【結果】AHDについて、肩甲骨前傾角度との間に有意な正の相関が認められた(r=0.32,p<0.05)が可動域との関連は見られなかった。APDについては2nd内旋角度と有意な負の相関が認められた(r=-0.33,p<0.05)が肩甲骨アライメントとの有意な関連は認められなかった。

【結論】肩甲骨前傾角度増加はAHD減少させると考えられているが、今回の結果では肩甲骨前傾角度増加とAHD拡大に関連がみられ、これまでの報告とは異なる結果が得られた。また、APD増加は肩関節内旋角度減少と関連がみられ、肩関節内旋時の回転中心が前方へ移動することにより、生理的な回旋運動を阻害している可能性があることが考えられた。本研究は肩に愁訴の無い健常成人を対象としており、因果関係を明らかにできていないため、今後は肩関節疾患を有した症例による検討が必要であると考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、 個人情報の保護について口頭で説明を行い、参加をもって同意を得られたものとした。

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© 2019 日本理学療法士協会
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