理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-M-1-4
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ミニオーラル
段階づけた倒立姿勢における肩関節と肩甲骨周囲筋の筋活動の変化
木下 和昭橋本 雅至横田 尚子澳 昂佑
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キーワード: 体操競技, 倒立, 筋活動
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抄録

【背景】

 体操競技は上肢で体重を支持する運動が多く、競技特有の肘関節や手関節の上肢傷害が報告されている。また身体機能の発達段階にあるジュニア世代から体操競技の基本姿勢である倒立練習が盛んに行われている。このような背景から、上肢傷害からのスポーツ復帰やジュニア世代での倒立練習は、上肢への荷重負荷を段階づける方法が重要である。そこで本研究は段階づけた倒立の練習方法における筋活動について検討することを目的とした。

 

【対象と方法】

 対象は健常男性10名とした。測定姿勢は肩関節屈曲90°位での上肢支持(90°位)、肩関節屈曲135°位での上肢支持(135°位)、肩関節屈曲180°位での上肢支持(倒立)とした。測定は表面筋電計マイオシステム1200(Noraxon社製)を用い、僧帽筋上部、僧帽筋中部、僧帽筋下部、広背筋、前鋸筋、三角筋前部、三角筋中部、棘下筋の筋活動を測定した。表面筋電図の解析には、波形解析ソフトマイオリサーチXP(Noraxon社製)を用いた。電極は直径34㎜のBlue Sensor(Ambu社製)を用い、皮膚をアルコール綿で十分に拭いた後に電極間の距離が2.0cmとなるように貼付した。

 実験手順は、まず各測定筋においてDanielsらによる徒手筋力検査法のnormalの手技から最大随意収縮時の筋活動(以下,MVC)電位を測定し、その後に本研究の測定姿勢について順序をランダムに実施した。測定時間は全ての姿勢で5秒間として、各施行間には1分以上の休息時間を設け、対象者の自覚的疲労感を聴取しながら実施した。得られた筋電波形は、50msの二乗平均平方根にて波形処理し、その波形の中央3秒間の平均振幅を測定値として算出した。測定値は各筋のMVCの値にて標準化した(以下、%MVC)。検討方法は、Friedmanの検定にて測定姿勢間の比較を行い、その後に多重比較を実施し、有意水準は5%とした。

 

【結果】

 135°位は90°位と比較して僧帽筋下部、前鋸筋に有意な筋活動の増大を認め(p<0.05)、僧帽筋上部と下部、広背筋に筋活動が増大する傾向があった(p=0.076)。倒立は135°位と比較して僧帽筋上部と下部に筋活動が増大する傾向があった(p=0.076)。倒立は90°位と比較して全ての測定筋に有意な筋活動の増大が認められた(p<0.05)。

 

【結論】

 90°位と比較すると、135°位は肩甲骨周囲筋の筋活動の増大が起こり、倒立まで上体を挙げることにより、さらに肩甲上腕関節周囲筋の筋活動の増大が起こることが明らかとなった。本研究で用いた段階づけた倒立は、成長段階にあるジュニア世代や傷害からの復帰段階の練習方法を検討していく上で有用になる可能性が示唆された。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

 本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象者には研究の内容やデータの利用に関する説明を行い,書面にて参加の同意を得た。また四條畷学園大学研究倫理審査委員会の承認(第18-2)を受けて実施された。

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© 2019 日本理学療法士協会
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