理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-M-3-2
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ミニオーラル
骨密度の低下が脊椎椎体骨折後の圧潰進行に及ぼす影響
小杉 直希田村 将良今井 えりか中根 一憲竹田 かをり奥谷 唯子原田 拓川島 由暉渡邊 晶規可知 悟
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キーワード: 脊椎椎体骨折, 圧潰, 骨密度
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抄録

【はじめに、目的】

脊椎椎体骨折は,骨粗鬆症に起因して受傷することが多くある。治療法としては,数週間の安静臥床や硬性コルセットを装着しての保存療法が多く選択されている。早期離床を行う事により圧潰のリスクもあることから,当院では2週間前後の臥床期間を設けている。一方で,廃用予防のために早期離床が必要との見解もある。そこで骨密度により,離床後の圧潰進行の差異を後方視的に検証した。

【方法】

対象は受傷後に入院治療を行った46例46椎体,男性2例,女性44例,平均年齢76.9±7.6歳とした。圧潰進行度の指標は,レントゲン画像より椎体の前額面上での最短径長の変化とした。計測時期は離床前,離床後8.5±2.3日(以下:離床後初期),22.6±3.6日(以下:離床後中期),36.5±4.8日(以下:離床後後期)の計4回とし,計測は同一の医師により行った。離床前を100%とし,離床後初期・中期・後期の各期における変化を算出した。全例をTスコア70%未満(以下:骨粗鬆症群)と70%以上(以下:非骨粗鬆症群)の2群に分けて比較検討した。統計解析にはEZR ver.1.2.7を使用し,二元配置分散分析を行った。事後検定として多重比較検定を行い,いずれも有意水準5%未満とした。

【結果】

各群の内訳は,骨粗鬆症群30例で年齢78.0±7.0歳,非骨粗鬆症群16例で年齢74.9±8.3歳であった。臥床期間は骨粗鬆症群13.5±1.8日,非骨粗鬆症群12.6±2.0日であった。年齢,臥床期間共に群間で有意差は認めなかった。圧潰進行度は交互作用を認めた。2群間の比較においては,離床後初期と後期において有意差を認め,骨粗鬆症群で有意に圧潰が進行する結果となった。非骨粗鬆症群では,離床前と比較し離床後の3期(離床後初期99.6±8.2%,中期95.9±12.0%,後期96.5±14.4%)との間に有意差は認めなかった。骨粗鬆症群では,離床前と比較し離床後の3期(離床後初期93.4±6.6%,中期90.5±11.2%,後期87.7±10.6%)全ての組み合わせで有意差を認め,早期より圧潰が進行している結果となった。

【結論(考察も含む)】

脊椎椎体骨折後の圧潰のリスクに関しての報告は少なく,一貫した結論は出されていない。本研究では,同程度の臥床期間である場合でも骨粗鬆症群において有意に圧潰が進行した。このことから骨粗鬆症は圧潰のリスクを高める可能性が示唆された。よって骨粗鬆症患者の脊椎椎体骨折に対する保存療法では,早期離床を進めるだけでなく臥床期間の延長も選択肢の一つとして検討することで圧潰の進行リスクを低下させる可能性がある。

今後は,筋力や歩行自立までの期間など運動機能への影響や重症度別の適切な臥床期間の検討が必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院倫理審査委員会の承諾を得て行った。また,個人情報が特定されないよう倫理的配慮を十分に行い,ヘルシンキ宣言に沿って実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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