理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-M-3-3
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ミニオーラル
腰部脊柱管狭窄症術後の6分間歩行距離の予測因子
-6ヶ月間の前向き縦断観察研究-
竹中 裕人神谷 光広杉浦 英志西浜 かすり鈴木 惇也花村 俊太朗花村 浩克
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抄録

【目的】

 腰部脊柱管狭窄症(LSS:Lumbar Spinal Stenosis)術後の歩行能力とその予測因子に関する研究は、患者報告式の評価項目が多く、客観的な運動機能を含め検討された研究は少ない。我々は、客観的な歩行能力の評価を簡便かつ妥当性が報告されている6分間歩行距離(6MWD:6 Minute Walk Distance)テストを用いて、LSS術後の歩行能力とその予測因子を検討した。そして、客観的な体幹筋力の評価を簡便かつ年代別標準値が報告されているMobie(酒井医療)を用いて測定した。本研究の目的は、LLS術後の6MWDの予測因子を客観的な運動機能を含めて明らかにすることである。

【方法】

 対象は、LSS手術症例78名とした(男性44名・女性34名、69.7±8.9歳、術式固定術31名・除圧術47名)。除外基準は、既術症例、MMT2以下の神経麻痺症例、重度な整形外科疾患および中枢神経系疾患の合併症例とした。測定項目は、手術所見を術式(0:除圧術、1:固定術)、手術高位数(0:1椎間、1:2椎間以上)、術前画像所見を硬膜管面積最小値、症状を腰痛・下肢痛・下肢しびれのVAS(0-100)、客観的な運動機能を6MWDと体幹伸展・屈曲筋力、で評価した。体幹筋力は、座位の等尺性筋力を徒手筋力計Mobie(酒井医療)で測定した。統計解析は、術前後の比較をMann-Whitney U testを用いた。重回帰分析は、目的変数を術後6ヶ月6MWD、説明変数を年齢、性別、身長、体重に加え、上記の測定項目として、AICを基準にしたステップワイズ法を用いた。

【結果】

 術後6ヶ月に全てのVASと運動機能は有意に改善していた(p<.01)。重回帰式は、術後6ヶ月6MWD(m)=549.5-5.3×年齢(歳)-1.8×体重(kg)-68.3×術式(0:除圧1:固定)-58.6×手術高位数(0:1椎間1:2椎間以上)+3.5×術前体幹伸展筋力(kg)+0.2×術前6MWD(m)であった。標準偏回帰係数(β)は、年齢が-0.45、体重が-0.2、術式(0:除圧1:固定)が-0.32、手術高位数(0:1椎間1:2椎間以上)が-0.28、術前体幹伸展筋力が0.26、術前6MWDが0.32、であった。自由度調整済決定係数は0.65であった(p<.001)。

【結論】

 本研究は、LLS術後の6MWDの予測因子を客観的な運動機能を用いて明らかにした。これらの独立した予測因子の内、術式(0:除圧1:固定)、手術高位数(0:1椎間1:2椎間以上)は、脊柱管狭窄の重症度を表しており、術前の患者への説明に役に立つ。そして、体重、術前体幹伸展筋力と術前6MWDは、変化可能な変数であり術前リハビリテーションにおいて有益な可能性がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はあさひ病院倫理委員会 (承認番号 A-27)と名古屋大学医学系研究科(承認番号16-519)の承認を得て実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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