理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-P-B-2-6
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ポスター演題
股・膝関節術後患者の尿失禁の有無と姿勢や骨盤の違いによる骨盤底筋群の関係
髙野 巴香出口 直樹五島 久美子加茂 奈津美花岡 洋子平川 義之
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抄録

【はじめに、目的】

腹圧性尿失禁(以下、尿失禁)は、日常生活の低下、心理的障害、社会参加の制限などを引き起こす。尿失禁には、骨盤底筋群(以下PFM)、腹横筋、横隔膜、多裂筋などのインナーユニットが関連し(生方ら,2017)、尿失禁の治療としてPFMのエクササイズが強く推奨されている。PFMの収縮程度は、姿勢や骨盤の位置によって異なるが尿失禁との関連は報告されていない。また、我々の調査では膝術後患者は尿失禁の割合が高い傾向があることが分かっている。そこで本研究では、下肢変性疾患術後患者を対象に尿失禁を有する者と有さない者において姿勢と骨盤の位置のPFM収縮程度を比較検討することを目的とした。

【方法】

平成29年6月~平成30年6月、当院に入院した女性の膝術後患者(人工膝関節置換術,高位脛骨骨切り術)及び股関節術後患者(寛骨臼回転骨切り術,人工股関節置換術)のうち、触診によるPFMの収縮が得られにくい者29名 (平均年齢62.8±18.1,BMI23.8±6.1,出産回数1.9±2.0)を対象とした。PFMの収縮の測定は、超音波診断装置(HITACHI Hivision AVIUS)を用い、対象者に計測の1時間前に排尿を済ませてもらい、500ml飲水し、計測終了まで排尿しないように指示し計測した。PFM はWhittakerら(2007)の方法に準じプローブは臍より下方で恥骨結合の上部に当て傾斜した位置で操作、「おしっこをとめるように」指示し、膀胱底下端部の挙上・下降距離を骨盤底挙上量(㎜)とした。測定課題は、PFMの背臥位及び座位における骨盤の3課題(前傾、中間、後傾)とした。統計学的解析は,1)PFM収縮程度を背臥位と座位での3課題による比較を一元配置分散分析のボンフェローニ法、2)尿失禁の有無における背臥位および座位での3課題のPMF収縮の比較と相関を対応のないt検定とスピアマン相関係数で分析し、有意水準5%とした。

【結果】

PFM収縮は,座位での後傾より背臥位での前傾(p=0.01),中間(p=0.02),後傾(p=0.02)が有意に大きかった。その他では有意な差を認めなかった。尿失禁群と非尿失禁群の比較は、出産回数(p<0.01)と背臥位での後傾(p=0.04)で差を認め,尿失禁群で出産回数が多く,背臥位の骨盤後傾で収縮が弱かった。その他の項目では,有意な差を認めなかった。相関分析では,尿失禁の有無と出産回数(r=0.54,p<0.01)と背臥位の骨盤後傾(r=0.46,p=0.01)で有意な相関を認めたがその他の項目では相関を認めなかった。

【結論(考察も含む)】

尿失禁のある者は、出産回数が多く、背臥位の骨盤後傾でのPFM収縮が弱い傾向にある。尿失禁に対する運動療法の介入としては、PFMの収縮程度のみではなく、背臥位の骨盤後傾位にて行うなど骨盤の位置も考慮する必要があるかもしれない。しかしながら、本研究は比較研究であり、今後症例数を増加し、骨盤の位置や姿勢に加え他のインナーユニットが尿失禁の有無と関連するか調査していきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院における倫理審査委員会の審査及び承認を得て、対象者には本研究の目的を口頭指示にて説明し同意を得た。(FRH2018-R-006)

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© 2019 日本理学療法士協会
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