理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-P-C-2-1
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ポスター演題
妊娠期における運動開始時期と分娩後仙腸関節痛の関連性について
川邊 莉香森野 佐芳梨石原 美香梅崎 文子畑中 洋子山下 守青山 朋樹
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キーワード: 妊娠, 運動, 仙腸関節痛
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抄録

【はじめに、目的】妊娠期には50%以上の妊婦において腰骨盤周囲痛を発症し、産後においても45%の産婦が継続して痛みを訴えている。産後腰痛の多くが仙腸関節部の緩みやズレを原因とする仙腸関節痛であると報告されており、産後の仙腸関節痛の予防は妊婦にとってQOL(Quality of life)やADL(Activities of daily living)を損なわない為にも重要である。一方で、妊娠期に行う運動が腰痛等の痛みを軽減するとの報告もあるが、妊娠期の運動習慣と分娩後の腰痛等の痛み症状との関連を検討している報告は少ない。また、妊娠期の運動の開始時期と疼痛予防の関連を検討した報告は認められないことから、本研究では妊娠期における習慣的な運動の開始時期の違いが分娩後の仙腸関節痛の有無に影響を与えるかについて検討することを目的とした。

【方法】産科婦人科クリニックを受診する妊婦35名(30.7±4.9歳)を対象とした。調査は、妊娠12週、24週、30週、36週、出産直後の計5回で実施した。質問紙を用いて疼痛・運動習慣を調査した。運動を開始した時期によって、対象者を妊娠12週から出産時まで継続して運動を実施した群(以下A群)、妊娠24週から実施した群(以下B群)、妊娠30週から実施した群(以下C群)、妊娠36週から実施した群(以下D群)の4群に分け、出産直後における仙腸関節痛の有無との関係性を統計的に観察した。統計学的処理はカイ二乗検定により運動の開始時期の違いと出産後の仙腸関節痛の有無の割合との関連性を調べた。その後、有意差が認められた場合はBonferroni補正により各群間の比較を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】本調査においてA群は3名、B群は11名、C群は10名、D群は11名であった。妊娠期の運動開始時期の違いと出産直後の仙腸関節痛との関連性に関しては、D群がA群と比較して仙腸関節痛の発生割合が有意に多かった。妊娠中における運動開始時期が早い妊婦ほど出産直後における仙腸関節痛が少ない傾向が認められた。

【結論(考察も含む)】本研究の結果より、妊娠期において運動開始時期が早いほど、出産直後の仙腸関節痛の発生割合が少なくなることが示された。妊娠すると胎盤より分泌されるリラキシンホルモンにより、仙腸関節を支えている筋肉・靭帯が弛緩し、疲労や損傷を受けやすい状態となり、分娩時に骨盤に大きな負荷が加わる事が仙腸関節痛を引き起こす原因とされている。本研究結果から、妊娠中の運動習慣により、骨盤を支持する筋肉や安定させる筋肉の筋力が維持、増進する事によって、分娩時の仙腸関節部の緩みやズレが起こりにくくなり、仙腸関節痛の発症を抑えられた可能性がある。よって、分娩後の仙腸関節痛発生を予防するにあたり、妊娠の初期段階から運動を取り入れる事の有用性が示唆されたと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は本学倫理委員会の承認を受けて実施され、ヘルシンキ宣言に則り、実験開始前に対象者に本研究の目的及び内容を書面と口頭にて十分に説明し同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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