理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O9-5
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口述
示指伸展運動課題の違いが運動関連脳磁界に及ぼす影響
小島 翔大鶴 直史宮口 翔太佐々木 亮樹横田 裕丈齊藤 慧犬飼 康人大西 秀明
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抄録

【はじめに、目的】

脳磁図を用いて,自発運動時の脳活動を記録すると運動関連脳磁界として著明な波形が記録される.この運動関連脳磁界は,運動磁界(Motor field; MF),運動誘発磁界第一成分(Movement evoked magnetic fields 1; MEF1)および運動誘発磁界第二成分(MEF2)などの複数の振幅成分から構成されており,運動強度や疾患などでこれらの成分が変化することが報告されている.本研究の目的は,示指伸展運動課題の違いが運動関連脳磁界に及ぼす影響を明らかにすることとした.

【方法】

対象は,右利き健常成人9名(21.1±0.3歳)であった.脳磁界計測には,Neuromag社製306チャネル全頭型脳磁界計測装置を使用し,示指伸展運動時の運動関連脳磁界を計測した.示指伸展運動課題は,1)右示指単独伸展運動,2)左右示指同時伸展運動,3)左右示指交互伸展運動の3条件とし,運動頻度は約5秒に1回のセルフペースとした.被験者には,示指の伸展範囲を一定にするために設置したターゲットまでの伸展運動を可能な限りすばやく行うように指示をし,指先には運動開始を記録するためにLEDセンサーを設置した.運動関連脳磁界の解析区間は運動開始前2000 msから運動開始後1000 msとし,約70回の加算平均を行った.Baselineは運動開始前1500 msから1000 msとし,フィルターは0.2 Hzから60 Hzのband-passを用いた.比較対象は最も著明な反応の認められたセンサーの運動関連脳磁界とし,MFおよびMEF1振幅値は運動開始前200 msから運動開始までのピーク値および運動開始から運動開始50 msまでのピーク値をそれぞれ算出し,各運動課題間で比較検討を行った.

【結果】

9名の被験者全てにおいて,各運動課題における示指伸展運動に伴い,著明なMFおよびMEF1が記録された.各運動課題時のMF振幅値は,42.1±14.7 fT/cm(単独伸展運動),23.6±16.5 fT/cm(同時伸展運動),39.3±16.8 fT/cm(交互伸展運動)となり,MEF1振幅値は,-62.5±51.9 fT/cm(単独伸展運動),-65.2±43.6 fT/cm(同時伸展運動),-58.3±62.0 fT/cm(交互伸展運動)であった.各運動課題時のMF振幅値の比較では,単独伸展運動時および交互伸展運動時に比べ同時伸展運動時において有意に小さな値を示した(単独伸展運動:P = 0.011,交互伸展運動:P = 0.033).また,各運動課題時のMEF1振幅値において,課題間の有意な差は認められなかった.

【考察】

先行研究では,両側運動時の皮質活動が片側運動時に比べ小さいことが示されている.本研究によって,運動関連脳磁界のMF成分は両側運動の影響が認められたものの,MEF1成分は影響が認められなったことから,各成分の生成要素が異なることが示唆された.

【結論】

両側同時運動では,片側単独運動および両側交互運動に比べ運動関連脳磁界のMF成分が減弱することが明らかとなった.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,かつ我々の所属する機関の倫理委員会の承認を得て行った.また,対象者には,書面および口頭にて実験内容に関する説明を十分に実施し,実験参加の同意を得た上で実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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