理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P6-6
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後方から前方に押す関節モビライゼーション時の腰椎分節間の関節の遊び
-超音波診断装置を使用した評価-
石田 弘末廣 忠延渡邉 進
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抄録

【はじめに、目的】徒手療法では、棘突起や肋骨突起を後方から前方に押す(posterior-anterior)モビライゼーション(以下PA)で腰椎分節間の関節の遊び(正常・過少・過剰運動性)を判断し、腰痛者に対する治療部位や手技が選択される。しかし、主観的な関節の遊びの評価は再現性に乏しい(Wong et al. 2017)。そのため、棘突起を押す力と、皮膚表面の移動距離を計測する機器で客観的な関節の遊びの評価を行い、再現性の高さが報告されている(Wong et al. 2017)。しかし、いずれも皮膚や皮下の軟部組織の影響が含まれる。そこで、本研究では、PA時の腰椎分節間の関節の遊びを、超音波診断装置で評価できるか検討した。

【方法】対象は、健常な男子大学生8名とした。被験者の姿勢は腹臥位とし、L3とL4棘突起が画像化できる位置に、日立社製超音波診断装置Noblusの音響カプラーを付けた18-5 MHzのリニアプローブを自作のホルダーで設置した。L4肋骨突起へのPAは自作の器具の重さを調節し、安静呼気位で行った。PAなし、9.8N、19.6N、29.4N、39.2N、49.0N、58.8Nの7条件で画像の記録を2セット行った。各条件でプローブからのL3とL4棘突起の距離を計測し、距離の差(L4-L3)を算出した(mm)。統計にはIBM SPSS Statistics 23を使い、級内相関係数で計測の信頼性を検討した。また、反復測定による一元配置分散分析で条件間の差を比較した(p<0.05)。

【結果】PAなし、9.8N、19.6N、29.4N、39.2N、49.0N、58.8Nにおける、プローブからのL3とL4棘突起の距離の差は4.1±1.7mm、3.8±1.6mm、3.9±1.7mm、4.0±1.7mm、3.9±1.8mm、3.8±1.8mm、3.7±1.8mmであった。級内相関係数は0.95、0.93、0.93、0.95、0.95、0.96、0.95であった。反復測定による一元配置分散分析では、7条件間に有意差はなかった(F=0.88、p=0.41)。

【考察】超音波診断装置を使用した計測の信頼性は高かった。しかし、プローブからのL3とL4棘突起の距離の差は、PAによって有意に変化しなかった。解剖体の腰椎を用いた先行研究(Lu et al. 2005)では、250Nの剪断力で分節間に0.5mmの相対的な位置変化が生じるという直線的な関係が報告されている。また、MRIを用いた先行研究(Kuli et al. 2004)では、L4棘突起のPA時に腰部全体の前彎が強まると報告している。つまり、健常者のPA時における腰椎分節間の相対的な位置の変化はかなり小さいこと、そして、PA時にL4の前方移動だけではなく、腰部の前彎増強に伴ったL3腰椎の前方移動が生じることで、L3腰椎に対するL4腰椎の相対的な前方への位置変化を超音波診断装置では評価できなかったと考える。

【結論】PA時の腰椎分節間の関節の遊びは、超音波診断装置で棘突起を画像化した今回の方法では評価できなかった。

【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は、川崎医療福祉大学倫理委員会の承認を得た後に実施した(承認番号:17-111)。被験者には研究内容を十分に説明し、署名による同意を得た後に実験を行った。

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© 2019 日本理学療法士協会
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