主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
p. I-13-1
腱は筋と骨の単なる連結部に過ぎず,これまで研究対象として注目されてこなかったのが現状である。しかし,およそ20年前にヒト生体における腱の力学的特性(スティッフネス,ヒステリシス)が超音波法により実測可能であることが示されてから(e.g., Kubo et al. 1999 J Appl Physiol),関連する知見が飛躍的に増加し,運動生理学やバイオメカニクス分野において新たな視点からの必要性が示唆されている。代表的な例としては,従来の関節角度変化から筋(線維)長変化を推定し筋の仕事量を算出する方法は,その前提が崩れており再考が必須であると言える。さらに,腱の力学的特性は,筋繊維の「力─長さ」関係および「力─速度」関係に大きな影響を及ぼし(e.g., Kubo et al. 2000 Acta Physiol Scand),ヒトの身体運動(特に伸張─短縮サイクル運動)のメカニズムを考察する上で重要な因子になる。一方,筋や骨などの他組織と同様に,成長・加齢および各種トレーニングなどにより,腱特性(主に横断面積や力学的特性)もさまざまに変化する。しかし,このような腱の可塑性に関する知見は,他組織(筋や骨など)に比べて量的な面で不十分であることは否めず,多くの点で一致した見解が得られていないのが現状である。さらに,最近では腱特性に加えて,ヒト腱の血液循環やコラーゲン線維配向(配列)に関する知見も踏まえて,腱特性の可塑性に関する詳しい機序を探る研究も進められている(e.g., Ishigaki et al. 2018 JPFSM)。本講演では,この20年の間に国内外で報告されてきた腱特性の機能的役割と可塑性に関する知見を中心にして,我々の研究成果を交えてご紹介する予定である。