理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O18-3
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口述
ウェアラブルセンサーを用いた歩行時のTrailing Limb Angleと推進力の評価の妥当性の検討
宮﨑 宣丞木山 良二川田 将之中井 雄貴米 和徳
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キーワード: 関節角度, 加速度, 歩行分析
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抄録

【はじめに,目的】 歩行中の推進力は歩行能力を左右する重要な要素であり,床反力の前方成分で評価されることが多い。また,立脚後期の矢状面における大転子と外果を結ぶ線と,垂直線のなす角度はTrailing Limb Angle (TLA)とされ,推進力と関係することが報告されている。

近年では,ウェアラブルセンサーなど,客観的評価が簡便にできる機器が普及しているが,ウェアラブルセンサーを用いて歩行時の推進力やTLAを分析した報告は少ない。

本研究の目的は,健常成人を対象にウェアラブルセンサーで計測した歩行時のTLA,推進力の基準関連妥当性を検討することである。

【方法】 対象は健常成人男性18名 (25.2±3.2歳) とし,測定にはウェアラブルセンサー (Mtw Awinda),3次元動作解析装置 (VICON MX3,AMTI BP400600) を用いた。対象者の体幹,下肢に19個の反射マーカーを貼付し,ウェアラブルセンサーは胸郭後面 (Th7-8),腰部後面 (L3),右大腿前面,右下腿前面の4箇所に固定した。

歩行は,通常歩行 (速度: normal,slow,fast),初期接地直後に体幹を前傾する歩行 (速度: normal,slow) の5条件を各5試行ずつ計測した。データの解析対象は歩行路8mの中央1歩行周期とした。

動作解析装置から得られた座標データと,大腿・下腿に固定したセンサーから得られた傾斜角度を基にTLAを算出し,ICC(2,1)を算出した。また,立脚中期から後期における床反力前方成分の力積と,胸郭・腰椎に固定したセンサーの加速度前方成分の積分値を算出し,Pearsonの積率相関係数を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。

【結果】通常歩行において,動作解析装置とセンサーで測定されたTLAは中等度の一致度を認めた (normal: ICC(2,1) = 0.591 (95%CI: 0.205-0.822), P = 0.003; slow: ICC(2,1) = 0.609 (95%CI: 0.230-0.831), P = 0.002; fast: ICC(2,1) = 0.644 (95%CI: 0.266-0.850), P = 0.002)。また,床反力と腰部センサーの加速度については高い相関関係を認めた (normal: r = 0.757, p < 0.001; slow: r = 0.816, p < 0.001; fast: r = 0.755, p < 0.001)。胸郭のセンサーでも同様の結果が得られた。

体幹前傾歩行についても,通常歩行と同様の結果が得られた。

【考察】 今回,ウェアラブルセンサーによるTLA,推進力の計測の妥当性が示された。近年,ウェアラブルセンサーの計測精度が向上してきており,様々な歩行条件でも傾斜角度や加速度を測定することが可能であったと考えられる。今回の結果より,ウェアラブルセンサーを用いることで,推進力やTLAを簡便に評価できることが示された。ウェアラブルセンサーを用いることにより,歩行の力学的指標を臨床現場で活用できると考えられる。今後は,症例を対象とした評価,feedbackなどの歩行練習へ応用できるように検討を進めていきたい。

【結論】 ウェアラブルセンサーを用いることにより,臨床現場において推進力とTLAを簡便に測定できる可能性が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言及び人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿ったものである。対象者には,事前に研究内容を書面にて説明を行い,自由意志による同意を得た。個人情報を含む書類は厳重に管理し,連結不可能匿名化により個人情報を保護した。

なお,本研究は,鹿児島大学医学部疫学・臨床研究等倫理委員会の承認を得て実施した研究である(承認番号: 170167疫)。

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© 2019 日本理学療法士協会
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