理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O18-4
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口述
Functional Reach Test を用いた身体機能自己認識誤差の評価方法の検討
‐予測値の再現性からの検討‐
立道 憂樹芥川 知彰出口 純次倉田 浩充日浅 匡彦
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抄録

【はじめに、目的】

近年,予測した身体機能と実際の身体機能の自己認識誤差と転倒の関連性が報告されている.身体機能自己認識誤差の測定方法としてFunctional Reach Test(FRT)の変法が用いられており,先行研究では目標物を提示しない予測,目標物を近づける予測(以下,接近予測),目標物を遠ざける予測 (以下,離隔予測)のうちいずれかの方法が用いられている.先行研究において目標物を提示しない予測では転倒発生カットオフ値などが報告されているが,接近および離隔予測では転倒との関連性について統一された見解は示されておらず,評価方法の妥当性,信頼性の検討もあまり行われていない.そこで本研究では,同一検者が接近および離隔予測を用いて最大リーチ距離の予測を行い,各予測の再現性を検討することを目的とした.

【方法】

健常成人20名 (男性11名,女性9名,24.4±3.1歳) を対象とした.予測値の測定開始肢位は,開始ラインにつま先を合わせ両上肢を降ろした立位とした.接近予測では対象者が到達不可能と思われる位置から検者がゆっくりと測定棒を近づけ,離隔予測では立位姿勢に影響を及ぼさない直近の位置から遠ざけた.対象者が目視にて到達可能と思われる限界距離に測定棒が達した時点で検者に合図をし,その位置から開始ラインまでの距離から挙上した上肢長を引いた値を予測値とした.予測値の測定順序はランダムとし,3試行ずつ測定した.1試行毎に3日間の測定間隔を設けた.すべての予測値を測定後,FRTを3回測定し,その平均値を実測値とした.予測値の再現性は級内相関係数 (Intraclass correlation coefficients : ICC) で検討した.また,接近および離隔予測によって測定した身体機能自己認識誤差 (実測値-予測値) を算出し,その絶対値を対応のあるt検定で比較した.統計学的有意水準は5%とした.

【結果】

ICC (1,1) は接近予測で0.67,離隔予測で0.64であった.また,ICC (1,3) は接近予測で0.86,離隔予測で0.84であった.接近予測と離隔予測との比較では,身体機能自己認識誤差 (-8.1±8.0cm vs 9.2±7.9cm, p=0.954) に有意差は認められなかった.

【考察】

ICC (1,3) では0.84以上の高い信頼性が得られており,複数回測定を行うことでより信頼性の高い測定結果が得られる可能性が示唆された.接近および離隔予測の身体機能自己認識誤差の絶対値に有意差が認められなかったことから,測定結果に過大または過小傾向が認められるものの,誤差の大きさには差がないことが示唆された.ICC (1,3) の結果から,どちらの測定方法を用いても信頼性の高い測定結果が得られる可能性が示唆された.

【結論】

身体機能自己認識誤差の測定は,接近予測および離隔予測のどちらを用いても複数回測定を行う事で信頼性の高い測定結果を得られる可能性が示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,中洲八木病院の倫理委員会の承認を得て実施し,対象者には研究及び発表に対する説明を行い,同意を得た上で実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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