理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O3-6
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口述
超音波刺激による筋衛星細胞の増殖促進効果
‐超音波刺激条件による効果の違い‐
縣 信秀清島 大資宮津 真寿美河上 敬介
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抄録

【はじめに、目的】

これまでに,筋損傷モデルラットを作成し,筋損傷2時間後に10分間の超音波刺激を行うと,筋損傷からの回復を促進すること,培養筋衛星細胞に超音波刺激を加えると増殖が促進されることを明らかにした.超音波刺激による筋損傷からの回復を効率的に促進させるためには,適した超音波刺激の条件を明らかにする必要がある.そこで,本研究では筋衛星細胞の増殖を促進させる超音波刺激の条件を明らかにすることを目的とした.

【方法】

C57BL6マウスの長趾伸筋をコラゲナーゼ溶液に90分間浸した後,培地中で筋線維をほぐし,単一筋線維のみを採取し,トリプシンによって筋衛星細胞を剥離し,ディッシュに播種した.播種後4日間は,増殖培地にて培養した.播種4日目にトリプシン処理によって剥離し,細胞数1.0×105で播種した.播種5日目にコンディション培地に交換し,2時間後に細胞増殖マーカーである EdU (10µM)を添加し,超音波治療器(UST-750,伊藤超短波)を用いて,10分間の超音波刺激を加えた.超音波刺激条件として,刺激周波数を3MHz,duty cycle を5,20,50%,出力を0.1,0.5,1.0 W/cm2とする群を作製した.また超音波刺激を加えない群をnonUS群とした.超音波刺激5時間後に,4%PFAで細胞を固定し,EdU染色と核染色を行った.すべての核とEdU陽性細胞数をカウントし,すべての核に対するEdU陽性細胞数の割合を算出し増殖率とした.

【結果】

duty cycle 5%で超音波刺激を加えた群では,出力0.1W/cm2 の増殖率は20.8%,0.5 W/cm2 は20.5%,1.0W/cm2 は21.7%で,nonUS群(18.5%)と比べ有意な差はなかった.duty cycle を20%で超音波刺激を加えた群では,出力0.1W/cm2 の増殖率は25.9%,0.5 W/cm2 は28.9%,1.0W/cm2 は30.4%となり,0.5,1.0 W/cm2 はnonUS群(22.3%)と比べ有意に大きかった.duty cycle を50%で超音波刺激を加えた群では,0.1W/cm2 の増殖率は16.5%,0.5 W/cm2 は17.1%,1.0W/cm2 は18.7%となり,すべての群でnonUS群(12.5%)と比べ有意に大きかった.

【考察】

超音波刺激の非温熱作用として,キャビテーション効果による機械刺激がある.機械刺激は,筋衛星細胞を活性化させると報告されており,本研究においても超音波刺激による機械刺激によって,筋衛星細胞の増殖促進効果が生じたと考えられる.さらに,duty cycle や出力が大きければ超音波刺激による機械刺激量も大きくなり,筋衛星細胞の増殖促進効果が高くなると考えられた.

【結論】

超音波刺激による筋衛星細胞の増殖促進効果は,その出力やduty cycle により異なり,出力や duty cycleがより大きい方の効果が高い傾向がみられた.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,常葉大学動物実験委員会の承認を得ている(2017-A04号).

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© 2019 日本理学療法士協会
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