Arch height flexibilityを用いた新たな足部評価基準値の作成

抄録

【はじめに、目的】扁平足は一般的に知られている足部のマルアライメントを指し，後足部回内や内側縦アーチの低下を呈する．先行研究において，扁平足はさらにflexible（荷重でアーチが低下）とrigid（非荷重で既にアーチが低下）のタイプに分類することができ，タイプ分類するために荷重によって変化するアーチ高（AH）の flexibility（AHF）の評価も必要であると報告されている．これまで，体重の10%荷重と50%荷重のAHを用いたAHFの基準値が報告されているが，近年では足部の静的アライメントが動的アライメントと関連することが重要であると指摘されている．歩行やランニングなどのダイナミックなコンディションを考慮すると，50%荷重よりもさらに荷重下でのAHを用いたAHFの基準値も作成する必要がある．そこで，本研究は90%荷重のAHを用いることで，新たなAHFの基準値を男女別で作成することを目的とした．

【方法】現在整形疾患を伴っていない健常男子大学生52名（104足），健常女子大学生55名（109足）を対象とした．先行研究で高い再現性が確認されているarch height index measurement systemを用いて，10%荷重と90%荷重のAH（足長50%地点）を計測した．AHFは（10%荷重のAH－90%荷重のAH）／（（0.8×体重）×100）で算出された．0.8は荷重の変化量を表し，AHFは値が高いほど荷重によってAHが低下することを指す．Smirnov-Grubbs検定により外れ値を確認後，先行研究に準じ五分位数（AHFを大きさ順に並べて5等分）を用いて男女別でflexibilityの程度を5タイプに分類した．本研究の解析はScilab-6.0.0とR-Studioにより実施された．

【結果】Smirnov-Grubbs検定の結果，AHFの外れ値は男女ともに認められなかった．男性ではAHF<6.7がvery stiffness，6.7≦AHF<8.8がstiffness，8.8≦AHF<10.5がneutral，10.5≦AHF<12.2がflexible，12.2≦AHFがvery flexibleの基準値となった．一方，女性ではAHF<5.8がvery stiffness，5.8≦AHF<7.9がstiffness，7.9≦AHF<9.8がneutral，9.8≦AHF<11.1がflexible，11.1≦AHFがvery flexibleの基準値となり，男性と異なっていた．

【考察】先行研究で報告されている50%荷重のAHを用いたAHFの基準値と比較して，本研究の基準値は異なっていた．しかし，歩行やランニングなどの動作は抜重と荷重の繰り返しであり，立脚期には体重以上の床反力を受ける．そのため，可能な限り荷重をした状態で足部アライメントを評価することが，動的な足部アライメントをより反映すると考えられる．また，本研究より男性と女性でAHFの基準値も異なっていたことから，本研究で作成されたAHFの基準値を男女別に用いて足部評価をする必要性が示唆された．

【結論】本研究のようなAHFの基準値を用いてflexibleな扁平足とrigidな扁平足の分類を行うことで，よりダイナミックなコンディションを反映する足部アライメント評価につながると考えられる．

【倫理的配慮，説明と同意】本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を受けて実施された（No. 17822-170605）．また，本研究はヘルシンキ宣言に則っており，実験開始前に対象者に本研究内容を口頭と書面にて十分に説明し，対象者の同意を得た上で行われた．