理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-1
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低強度の運動や他動ストレッチが認知機能と感情に及ぼす影響
若野 世奈土田 和可子浅川 真由松尾 真吾鈴木 重行浅井 友詞
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抄録

【はじめに、目的】近年,運動が様々な疾患の予防だけでなく,認知機能の向上につながることが知られており,その効果は中等度~高強度の運動で顕著にみられると報告されている。一方,低強度の一過性の運動でも認知機能に好影響を及ぼすことが報告されているが,どの程度の運動が認知機能や心理面に好影響を及ぼすのかについて十分な科学的根拠が示されていないのが現状である。また,近年,ストレッチは気分の改善など心理面で有益な効果をもたらす運動として注目されている。しかし,他動ストレッチが認知機能や心理的効果に及ぼす影響を検討した報告は極めて少なく,その効果は不明である。そこで今回,低強度の運動や他動ストレッチが認知機能と感情に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】対象は若年健常者20名(男性10名,女性10名,平均年齢:20.2±1.1歳,平均身長:161.6±7.2cm,平均体重:59.3±11.3kg)とし,座位をとらせる安静条件,自転車エルゴメーターによる下肢ペダリング運動(30%HRmax)を行わせる運動条件,右側ハムストリングスを他動的に伸張させるストレッチ条件の3条件(各10分)を1週間空け,順不同にて実施した。認知機能はTrail Making Test-part A,B(TMT-A,B)とStroop testを用い,感情はMood Check List-short form 2(全12項目)を介入前後に実施し、快感情、リラックス感、不安感の3因子を評価した。

【結果】TMT-A,BとStroop testの回答時間は,それぞれ介入前と比較し,運動後およびストレッチ後に短縮した。また,快感情と不安感は,介入前と比較し,運動後およびストレッチ後に改善した。リラックス感は,運動後に低下し,ストレッチ後に改善した。

【考察】低強度の運動後,他動ストレッチ後に,認知課題の遂行時間が短縮したことから,低強度の運動,他動ストレッチは認知機能へ好影響を及ぼすことが示唆された。低強度の運動後にはリラックス感が減少したが,他動ストレッチ後にはリラックス感の減少を伴うことなく,気分の改善がみられた。これらのことから、他動ストレッチは、認知機能や心理面へ好影響を及ぼす運動の代替手段として利用できる可能性が示唆された。今後は,運動やストレッチがもたらす認知機能や感情への影響を解明するだけでなく,さまざまなニューロイメージング手法を用いて,低強度の運動やストレッチングが脳機能に及ぼす影響について詳細な検討をする必要がある。

【結論】他動ストレッチには,低強度の運動と同等の認知機能向上効果と気分改善効果がある可能性が考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,日本福祉大学の倫理審査委員会の承認を得て行った。対象者に対して,書面および口頭にて研究内容を説明し,同意署名を得た上で実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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