主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
本邦における肩こりの有訴率は非常に高く,厚生労働省が行っている国民生活基礎調査において有訴率が男女ともに上位を示しているが,肩こりが原因で通院している人は少ないと報告されている.そのため,肩こりを自覚している人に対するセルフエクササイズの確立が必要である.先行研究において,肩こり有訴者は健常者と比較して僧帽筋上部線維(Upper Trapezius,以後UT)の筋血流の低下や筋硬度が増加しており,これらの改善に物理療法やストレッチングが有用であると報告されている.その中でも,UTのセルフエクササイズの一つとして,肩甲帯挙上の動作であるショルダーシュラッグ(シュラッグ)があり,この動作を行うことで頸部・肩の自覚的な症状が軽減したと報告されている.しかし,シュラッグによるUTの筋硬度の変化についての報告や,シュラッグにおける収縮時間や反復回数を変化させた際の筋硬度の変化についての報告はれない.そこで本研究では,シュラッグがUTの筋硬度に及ぼす影響についてシュラッグにおける収縮時間や反復回数を変化させた際のUTの筋硬度に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は,神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常成人男性20名(年齢21.0±0.2歳,身長169.4±4.8cm,体重62.8±4.1kg)の右肩合計20肩のUTとした.筋硬度の測定は,超音波画像解析装置(Aplio500:東芝メディカルシステムズ株式会社)のせん断波エラストグラフィー機能による弾性率測定を行った.弾性率の測定は,安静座位と安静腹臥位にて介入前後に各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた.課題動作は,5秒収縮-5秒休憩×50回(5秒条件)および1秒収縮-1秒休憩×50回(1秒条件)の2条件とした.なお,条件は1日1条件とし,各々3日間以上の時間を空けて行った.動作は被験者に最大努力にて行うように口頭にて指示をした.統計学的検定は,介入前後と課題動作間におけるUTの弾性率の比較を反復測定二元配置分散分析を用いて検討した.なお,有意水準は5%とした.
【結果】
シュラッグ介入前後と5秒条件・1秒条件間における二元配置分散分析の結果,有意な交互作用および主効果は認められなかった.
【考察】
本研究結果より,シュラッグ介入前後においてUTの弾性率の変化が認められず,その効果に関しては5秒条件および1秒条件とも同様にUTの弾性率に有意な変化は認められなかった。これらの結果より,シュラッグによってUTの筋硬度の減少効果はなく,収縮時間は筋硬度減少効果に影響を及ぼさないことが明らかとなった.
【結論】
シュラッグ動作は僧帽筋の筋硬度に影響を及ぼさないことが明らかとなった.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は新潟医療福祉大学の倫理委員会の承認を得て実施された.また,本研究はヘルシンキ宣言に則っており,実験開始前に対象者に本研究内容を口頭において十分に説明し,同意を得た上で行われた.