理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P7-5
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末梢性筋疲労が筋硬度に及ぼす影響の検討
-骨格筋電気刺激を用いた検討-
清野 涼介中村 雅俊佐藤 成髙橋 信重吉田 委市
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抄録

【はじめに、目的】

筋硬度は筋実質部の硬さを表しており,筋硬度の増加は関節可動域の低下やリハビリテーションの阻害因子である.また,筋硬度の増加は日常生活活動やスポーツのパフォーマンス,障害発生にも影響を及ぼす可能性が報告されている.先行研究において,レジスタンストレーニング(RT)終了直後に筋硬度が増加することが報告されており,中枢および末梢性の疲労によって筋硬度が増加する可能性が考えられる.しかし,RTの介入による筋硬度の増加に影響する疲労が中枢性か末梢性かについては明らかではない.そこで本研究の目的は,骨格筋電気刺激により生じた末梢性疲労による筋硬度の変化を検討することで,末梢性の筋疲労が筋硬度に及ぼす影響を明らかにすることとした.

【方法】

 対象は整形外科疾患と疼痛を有さない本学男子学生20名(年齢21.1±0.3歳,身長170.5±5.5cm,体重62.5±5.5kg)とし,利き足側の腓腹筋内側頭(MG)と腓腹筋外側頭(LG)とした.測定肢位はベッド上腹臥位で多用途筋機能評価訓練装置(BIODEX system 3.0:BIODEX社)のフットプレートで足関節底背屈0°に固定した.筋硬度測定は先行研究に従って,膝窩皺から外果を結ぶ近位30%の高さにおいて,超音波画像診断装置(Aplio500:東芝メディカルシステムズ株式会社)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,MGおよびLGの弾性率測定を行った.測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた.筋電図の測定は先行研究に従って,自着型電極をMGとLGに貼付し,電気刺激装置(アイソレータ SS-104J:日本光電工業株式会社)の刺激電極を膝窩部に設置し,脛骨神経を刺激し,H:M recruitment curveを記録し,最大M波振幅(Mmax)およびH波振幅(Hmax),その比率のH/M比を算出した.疲労課題は低周波治療器(ESPURGE:伊藤超短波株式会社)を用いて,MGを矩形波(ハルス幅400μs,パルス周波数80Hz)で収縮時間5秒,休憩時間20秒で刺激し,事前に測定した最大M波振幅が3連続で80%を下回るまで行った.なお,刺激強度は対象者が耐えられる限界とした.統計学的検定は,疲労課題前後の比較を対応のあるt検定を用いて検討した.

【結果】

末梢骨格筋電気刺激により,MGのHmax,Mmax,LGのMmaxは課題前と比較して課題後に有意に低値を示した.しかし,MGおよびLGの弾性率とH/M比には有意な変化は認められなかった.

【考察】

本研究の結果より,骨格筋電気刺激による末梢の筋疲労課題によって,HmaxおよびMmaxは有意に減少するが,末梢筋電気刺激による末梢性の筋疲労によって筋硬度は変化しないことが明らかになった.

【結論】

骨格筋電気刺激による末梢性の筋疲労が筋硬度の増加に影響を及ぼさないことが明らかとなった.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は本学の倫理審査委員会も承認を受けて実施された.また,本研究はヘルシンキ宣言に則っており,実験開始前に対象者に本研究内容を口頭と書面にて十分に説明し,同意を得た上で行われた.

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© 2019 日本理学療法士協会
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