理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O13-4
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口述
股関節角度変化が内側広筋と外側広筋の伸張に与える影響
簗瀬 康中尾 彩佳本村 芳樹梅原 潤駒村 智史宮腰 晃輔市橋 則明
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抄録

【はじめに、目的】

単一筋の伸縮によって周囲の筋膜が引き伸ばされ、隣接している筋が変形すること(筋膜張力伝達)が先行研究で報告されている。単に筋の走行を考慮すると、大腿四頭筋を構成する筋のうち、二関節筋である大腿直筋は股関節伸展かつ膝関節屈曲により伸張される。一方で、単関節筋である内側広筋や外側広筋は膝関節屈曲により伸張され、股関節肢位の影響は受けない。しかし、筋膜張力伝達の観点から考えると、大腿直筋が伸張される股関節肢位では内側広筋や外側広筋も同様に伸張される可能性がある。本研究の目的は、股関節肢位の違いが内側広筋と外側広筋の伸張の程度に与える影響を検証することとした。

【方法】

健常男性14名を対象とし、次の4種類の股関節肢位をランダムに行った:股関節90度屈曲位(屈曲条件)、股関節5度伸展位(伸展条件)、股関節5度伸展位かつ10度内転位(伸展内転条件)、股関節5度伸展位かつ40度外転位(伸展外転条件)。各肢位とも背臥位かつ膝関節90度屈曲位で実施した。これら4肢位および安静位で、超音波診断装置せん断波エラストグラフィ機能を用いて内側広筋と外側広筋、大腿直筋の弾性率を測定した。弾性率は高値であるほど筋が硬いことを示し、筋伸張位ほど高値となることが先行研究により示されている。各筋の弾性率について、肢位間の比較のために反復測定一元配置分散分析を行い、事後検定としてBonferroni法による多重比較を行った。有意水準は0.05とした。

【結果】

反復測定一元配置分散分析の結果、内側広筋と外側広筋、大腿直筋の全てにおいて主効果を認めた。各筋とも、伸展・伸展内転・伸展外転条件が安静・屈曲条件より有意に高値を示し、さらに伸展・伸展内転条件が伸展外転条件より有意に高値を示した。

【考察】

内側広筋と外側広筋は膝関節伸展の単関節筋であるが、股関節伸展位、あるいは股関節伸展内転位でより伸張された。これらの肢位で大腿直筋が伸張されたことにより、大腿直筋に付着する筋膜が移動し、大腿直筋に隣接している内側広筋と外側広筋も同様に伸張されたと考えられる。また、股関節伸展外転位では各筋とも、股関節伸展位や股関節伸展内転位に比べて伸張されなかった。大腿直筋は股関節外転モーメントアームを持つため、股関節外転位では短縮位になったと考えられる。さらに大腿直筋が短縮位となったことで大腿四頭筋間の筋膜による機械的相互作用が生じにくくなり、内側広筋と外側広筋は十分な伸張が得られなかったと考える。

【結論】

大腿直筋の伸張位である股関節伸展位、または股関節伸展かつ内転位において、膝関節伸展の単関節筋である内側広筋・外側広筋も同様に伸張されることが明らかになった。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は本学における医の倫理委員会の承認を得た後に実施した。ヘルシンキ宣言に基づいて、被験者には実験の内容について十分に説明し、書面にて同意を得た上で研究を実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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