主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
超音波刺激(US)と静的ストレッチング(SS)の併用方法には,SSの施行前にUSを併用する方法とSSと同時にUSを併用する方法がある.我々は,これまでにUSとSSのそれぞれの単独施行が筋硬度の低下に作用することを報告した.しかし,筋硬度を低下させるために必要なUSとSSの至適な併用方法とその効果については実証されていない.本研究の目的は,SSに併用するUSの施行順序が筋硬度に及ぼす影響を検証し,USとSSの至適な併用方法を明らかにすることである.
【方法】
対象は,健常成人男性14名(年齢26±3.8歳・身長172.3±5.0cm・体重64.7±4.6kg・BMI 21.8±1.4kg/m2)とした.施行条件は,① SS施行中にUSを実施したA条件(5分間×2セット),② SS施行前にUSを実施したB条件(US 5分間・SS 5分間),③ SSのみ実施したC条件(5分間×2セット)とし,それぞれ計10分間施行した.US条件は,周波数1MHz,強度2W/cm2,照射時間率100%(連続照射)とし,ストローク法と回転法を併用しながら下腿三頭筋とアキレス腱の後面および側面を包括的に照射した.SSは,多用途筋機能評価運動装置を用い,痛みのない最大の足関節背屈角度にて実施した.評価項目は,超音波診断装置せん断波エラストグラフィー機能を用いて測定した内側腓腹筋(MG)の弾性率(筋硬度)とした.測定は,施行直前・施行5分後・施行10分後に実施し,施行直前と5分後(⊿T1)・施行直前と10分後(⊿T2)の各々の変化率にて条件比較を実施した.
【結果】
反復測定による二元配置分散分析の結果,MGの筋硬度は3条件間において交互作用が認められた(p < 0.01).多重比較法(Bonferroni検定)の結果,⊿T1はA条件がB・C条件に比べ有意に筋硬度が低下した(p < 0.05).B条件とC条件には有意差は認められなかった.⊿T2では,A条件がC条件に比べ有意に筋硬度が低下したが(p < 0.01),B条件とは有意差は認められなかった.B条件とC条件の間には有意差は認められなかった(p = 0.086).
【考察】
USとSSの併用方法においては,SS単独施行やSSの施行前にUSを併用する条件に比べUSとSSを同時に施行する併用方法が最も早期に筋硬度が低下した.我々の先行研究において,USとSSはそれぞれの単独施行においても筋硬度が低下することを報告している.このため,他の条件に比べてUSとSSの同時施行では,SSの効果とともにUSの付加的効果が同時に複合され相乗的に筋硬度を低下させたものと考えられる.
【結論】
筋硬度を低下させるために必要なSSとUSの至適な併用方法としては,SSの施行前にUSを併用する方法に比べSSとUSを同時に施行する方法がより有効である.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言および人を対象とした医学系研究に関する倫理指針に準拠し,京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部付属病院医の倫理委員会の承認を得て実施した(R0171-3).対象者には,実験前に研究目的と内容を口頭および書面にて説明を行い,参加同意書への自筆による署名をもって研究協力の同意を得た.