主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに】
二分脊椎児(Spina Bifida以下SB)は脊髄・脊椎の先天的異常であり、運動・感覚障害を有する。学齢期の二分脊椎児は肥満等の問題により、運動機能が低下することもある。この二次障害の予防には理学療法介入が必要であり、学校生活での身体活動や移動能力の維持が重要である。そこで今回、SB児の移動能力について小児の機能的移動能力を移動補助具の使用を考慮して分類する、機能的移動能力尺度(Functional Mobility Scale:以下FMS)を使用して、学校学級種類別の学習環境との関係を明らかにすることとした。
【方法】
対象は、2017年4月時点で理学療法に登録されている学齢期の二分脊椎児26名(男児8名、女児18名、平均年齢11±3.7歳)とした。障害内訳はSharrard分類I~Vの順に5, 3, 9, 6, 3例、Hoffer分類CA~NAの順に11, 7, 2, 6例であった。調査方法は、診療記録からの後方視的調査および担当理学療法士による聞き取り調査を行った。調査項目はFMS、特別支援学校/学級の区分とした。FMSは、すべての床面で独歩(6点)、平らな床面での独歩(5点)、杖を使う(1本か2本)(4点)、クラッチを使う(3点)、歩行器を使う(2点)、車いすを使う(1点)、這う(c)、該当なし(N)で採点した。FMSとSharrard分類、Hoffer分類の関係についてはSPSS Ver.24を用いてSpearmanの順位相関にて調査した。
【結果】
FMS(5m、50m、500m)とSharrard分類、Hoffer分類の関係では、どちらもρ=0.7以上と高い相関を示している。学習環境は特別支援学校23%(6例)、支援学級15%(4例)そして普通学級62%(16例)でありSharrardⅠ、Ⅱ群は普通学級2名、特別支援学校/学級6名、SharrardⅢ群は同順で7名、2名、SharrardⅣ、Ⅴ群で同順に7名、2名であった。SharrardⅢで普通学級へ通っている7例の内Hoffer分類Household Ambulator(HA)の5例は、FMS 5mで独歩(6点/1例、5点/3例)歩行器歩行(2点/1例)、FMS 50mで独歩(5点/2例)歩行器歩行(2点/2例)車いす(1点/1例)、FMS 500mで独歩(5点/1例)歩行器歩行(2点/1例)車いす(1点/3例)であった。
【考察】
学習環境別に移動能力をみると普通学級への通学は半数を超えており、独歩や歩行器歩行での移動が多かった。SharrardⅠ、Ⅱ群は、特別支援学校/学級へ通学する児が多かった。SharrardⅢ〜Ⅴでは普通学級へ通学している児が多く、特にSharrardⅢのうちHoffer分類HAは、FMSで示す環境ごとに移動能力が異なるため、適切な補装具や移動補助具の導入・適応に配慮が必要と考える。またFMSで機能的移動能力を採点する事で、その実態や変化を捉え理学療法へ反映しやすく臨床的意義は高いと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施に際しては、北海道立子ども総合医療・療育センターの倫理委員会での承諾を得た(子総企第62−11号)。研究への協力は対象者の自由な意思に任され、研究の途中や研究参加後でも撤回を希望される場合はそれに従い、研究参加の是非による不利益を被らないように実施した。研究協力説明書と研究協力同意書に基づきインフォームドコンセントを行い、同意と直筆でのサインを得た。