主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
今回、当施設の児童発達支援事業所に通園する重症心身障害のある未就学児3名を対象に、発達的変化をとらえる目的でLife Inventory to Functional Evaluation(以下、LIFE)を用いて定期的に評価を実施し、その結果を分析した。
【方法】
対象は当施設に通園する脳性まひと診断された男児3名。それぞれの評価開始時年齢は2歳6ヶ月(以下、A)、4歳6ヶ月(以下、B)、5歳0ヶ月(以下、C)であった。3名ともGross Motor Function Classification Systemレベル5である。Aに医療的ケアはなく、寝返りが可能だが、座位保持は困難。BとCは喉頭気管分離術後で2名とも夜間人工呼吸器管理を必要とし、Cは常時酸素投与を必要とする。Bは座位保持や姿勢変換は困難。手指にわずかな運動を認める。Cは寝返りが可能だが、座位保持は困難。
LIFEによる評価を平成28年11月から平成30年5月までの期間に、初回から約半年に1回の頻度でAが3回、Bが4回、Cが3回実施した。評価は母親へのインタビューと観察によって行った。パート1生命維持機能、パート2姿勢運動機能、パート3日常生活場面における機能的活動の各パートの素点合計を満点中のパーセンテージで算出し、それぞれのパートごとに結果を分析した。
【結果】
AとCは初回評価から3回目にかけて全パートで向上を認めた。Aにおいては、パート1は93.7%から97.9%、パート2は50.0%から75.0%、パート3は33.3%から46.1%に向上した。Cにおいては、パート1は27.0%から43.7%、パート2は37.5%から52.0%、パート3は28.2%から30.7%に向上を認めた。Aではパート2の2回目の評価で下肢の運動、上肢のリーチ運動の項目で加点され、3回目では腹臥位における移動機能、上肢のリーチ運動、手の巧緻運動の項目で加点されていた。Cではパート1において感染回数や熱発回数が減少したことで加点され、咳による分泌物の喀出機能の項目でも加点された。Bにおいても初回から4回目の評価でパート1は35.4%から45.8%、パート2は6.2%から8.3%、パート3は12.8%から28.2%に向上した。しかし、パート1では、2回目に日常的なSpO₂値向上や呼吸器感染と熱発回数が減少したことで加点され50.0%となり、3回目では咳による分泌物の喀出機能の項目で加点され52.0%となったものの、4回目では呼吸器感染と熱発回数が増えたこと、日常的にSpO₂値が90%未満になり減点された結果、45.8%へと低下を認めた。
【結論】
重度な運動障害のある幼児に対して、LIFEは包括的に機能をとらえ、個別の発達的変化をとらえられる評価指標になる可能性がある。評価結果から、重度な運動障害のある幼児では機能向上による発達的変化だけでなく、早期に維持や低下の経過をたどる場合もある。理学療法においては、機能低下を含めた個々の発達的変化を的確にとらえ、運動発達促進とともに早期から機能低下の予防の手立てを検討し、活動と参加を広げていく必要がある。
【倫理的配慮,説明と同意】
発表に当たりまして、本発表で使用している個人の情報や画像等については当法人の倫理委員会の承認を得ており、ご家族への説明と共に書面にて同意を頂いております。